昨日ビルマ(ミヤンマー)から国民民主連盟(NLD)党首・アウンサンスーチー女史が来日した。早速在日ビルマ人の集会に出席し講演した。2015年までに現行の憲法を改正したいと述べ、日本にいるビルマ人に日本で学んでビルマの国づくりに協力して欲しいと訴えた。出席者は顔を綻ばせて感激していた。だが、スーチーさんが現在置かれた立場と今後進むべき道は、依然に比べて極めて厳しくなったと言わざるを得ない。
スーチーさんの今回の来日は27年ぶりで要人の滞在にしては1週間とやや長い。ビルマにおける日本企業進出に対する日本政府の期待による招待であるが、最近国際社会ではスーチーさんは政治家としては期待外れとの厳しい評価も出てきて、その行動が鼎の軽重を問われている。
これまでビルマ独立の父、アウンサン将軍の娘として、また軍政への不屈の抵抗によって国民的人気を保ち、自由と民主体制の象徴的シンボルと見られていたスーチーさんであるが、昨年7月に国会議員に当選して以来国際社会とビルマ国内からも彼女の言動に対する失望の声が聞かれるようになった。それは15年間に及ぶ軟禁生活で外界から遮断されていた不幸な事情はあるにせよ、現実を知らなさ過ぎて政治家としての資質に欠けるという厳しいものである。
かつて、毎年のようにビルマを訪れていた頃に度々聞いた話がある。バングラデッシュとの国境アラカン山脈に居住するロヒンギャ族は現在も無国籍者であるが、それでも当時はビルマ国民のマジョリテイを占めるビルマ族のビルマ政府とうまく共存していた。それが最近ビルマ政府の弾圧により被害を受けているらしい。もうひとつの少数民族カチン族にしても、ビルマ政府軍と停戦状態にあったが、最近政府軍の攻撃により北部カチン独立軍が厳しい状況に置かれているという。これら少数民族問題についてスーチーさんがほとんどコメントしないため、あまりにも民族問題について無知だというのである。
少しずつではあるが民主化路線を歩き出したビルマは、アジアに残された唯一の未開の大市場という魅力があり、各国政府がアプローチを試みているが、最近まで中国を除いて思うようには行っていない。そのせいでビルマの様子が是々非々を取り混ぜメディアを通して伝えられるようになった。
購読している月刊誌「選択」も、スーチーさんに対する評価が下落していることを大きく取り上げている。「政治家としては『役立たず』か―色褪せるアウンサンスーチー」(2012年11月号)、「季節外れの『スーチーフィーバー』―来日を食い物にする愚」(2013年4月号)と容赦もなく手厳しい。いずれも2頁いっぱいにかなり詳細に書かれている。
あれほど人格者として、また民主化運動のリーダーとして信頼を集めていたスーチーさんがまだ数は少ないとは言え、支持者が減っているのは政治家としての資質や、実績、公約などのアピールが不十分だからでもあり、ブレーンに人材を得ていないとの印象を受ける。もちろん彼女の政治家としての経歴に傷をつけないよう、彼女自身も自覚する必要があると思う。それには少数民族問題から逃げることなく真正面から向き合い、ビルマ全体の民主化の問題として解決する覚悟を固める必要がある。
いずれにしろ、結論を急いでは元も子も失くしてしまう。堅実に政権政党への準備を進め、その暁には成果が挙げられるようあらゆる体制を整えるべきである。NLDもスーチーさん人気だけに頼らず、政党としてきちんと基盤を整備する必要があるのではないか。