2216.2013年6月7日(金) 酋長の娘、ナンシーさんに会う。

 トラック島、現在のチューク島とグアムの間には定期便が週4便しかない。そのうち、3便は朝便で1便が夜である。その朝便8:20発のホノルル行ユナイテッド航空172便に搭乗するため朝5時のモーニングコールで起こされた。昨日に続いて2日連続の早起きである。

 今朝ホテルで迎えの車を待っている間に腹立たしいことがあった。私の他に同じフライトに乗る若い男女の6人組みの内5人が、時間になっても一向にロビーに集まらない。とっくに出発時間は過ぎている。私は先に車で待っていたが、ガイドが待ちきれずに呼びに行った。漸く遅れた6人組みはやって来たが、待たせたことに対して「すみません」とか、「お待たせしました」の言葉や挨拶もなく、シャーシャーとして車に乗り込む無礼にむかっときた。こんな若造に文句を言っても始まらないので、知らぬ顔をしていたが、腸は煮えくり返っていた。「すみません」の一言がなぜ言えないのか。好青年もそこそこいるが、これが今様の若者風情である。

 綺麗な海岸のチューク国際空港に着陸した時に、あまりにも小さく素朴な空港ビルを見て以前は感じなかった「置いて行かれた国」とのイメージが浮かんできた。今では日本の地方空港でも見られないようなこじんまりした建物である。ホテルまで未舗装の悪路や貧しそうな家々を見て、これではいつか森喜朗・元首相がいずれ日本から直行便が飛ぶことを願っていると言っておられたが、現状は中々難しいのではないかと感じた。最近の島の様子がまだよく分らないが、島の発展の基盤を支えるビビッドな経済活動が見られないような気がする。現状を見ているとこのまま経済支援被援助国のイメージがつきまとってしまうのではないかという気がしてならない。今アフリカが資源産出国として国際社会から脚光を浴びているが、この中部太平洋諸島からは自然エネルギー資源が産出されないのが悔しいところだ。

 空港で入国手続きがのんびり進められていたが、スローですねと隣の外国人観光客に話しかけたらあまり気にならないとの応えに、「郷に入っては郷に従え」を痛感した。最後部に並んでいたが、トイレが我慢できず、トイレ探しに1人で別の建物へ向かっていた時係官から呼び止められ、トイレを探していると答えたところパスポートをチェックして親切にもトイレへ案内してくれた。愉快なのは、トイレを出たらスコールがやって来たが、係官がすぐに傘を貸してくれたことである。こういうところはのんびりしているが、島の人々のアトホームで優しいところだろう。残念ながらこれが経済発展にはつながらないことである。

 空港では、末永卓幸さんと仰るチュークの旅行業者として長年活躍しておられる方が奥様とともに出迎えてくれた。戦没者遺骨収集や慰霊団でもお手伝いをしておられるという。

 空港から懐かしい「トラック・ブルー・ラグーンホテル」へ泥んこ道を走りながらやってきた。以前泊まった時のイメージは確かに残っている。末永さんに聞いてみるとバンガローの壁色は変えたが、他は昔のままだという。ここでナンシーさんにアポ通り会うことができた。

 話してすぐナンシーさんの言葉の端々に父親のススム・アイザワ大酋長への思慕と愛情が感じられた。手帳に酋長と二人して金閣寺で撮った写真を大切に持っていて、見せてくれたことでもその親愛の情は分る。訪問の主旨はすでに伝えていたので、知る限りいろいろ話してくれた。しかし、酋長の学校通学歴がよく分らない。娘の言うことが一番正確だとは思うが、必ずしもすべてを知っているということでもない。まだ充分話を聞いたわけではないが、有難いことに私が父親のドキュメントを書くということに関しては極めて好意的で協力的であることである。その分益々責任を感じる。午後になってまた凄いスコールがやって来た。ホテルのベランダから海を見ていると激しい雨粒がたたきつけられている。これこそ南洋のシンボルである。

 さて、夕食の折のことである。実はホテル・レストランのパスタが美味くなかった。仕方なしにビールを飲みながら辺りを見回していたところ、お隣のテーブルでご夫婦がIpadを観ながら食事をされていた。見るとはなしにちらっと画面を覗いたところ、海底に沈んだ旧日本海軍船の残骸の稀に見るほどクリアで素晴らしい写真が後から後からアップされた。思わずお声をかけた。拝借できるものならぜひとも今取り掛かっているドキュメンタリーの紙面に使用したい作品である。お話ではわが家に極く近い三宿にお住まいの熊谷光剛さんと仰る歯科医ご夫婦で、ご夫婦で海底に一緒に潜って写真を撮っておられるという。私の希望をお伝えしたところ大変好意的に受け止めてくれ、写真提供にご協力いただけるとご返事をいただいた。これは大変助かる。

 明日は酋長の実家がある、トール島(水曜島)を案内していただけることになっている。

2013年6月7日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com