2225.2013年6月16日(日) イランとトルコ両イスラム国家の注目される話題

 イラン大統領選挙で保守穏健派の聖職者・ロウハニ師が当選した。これまで2期8年間に亘り政権を握っていた保守強硬派のアフマディネジャド大統領路線を引き継いだ候補者らを大差で破り、ロウハニ師が今後4年間イランの政治を主導することになった。保守穏健派の勝利の背景には、西側諸国からとかくの非難を受けながら、核開発を強引に推し進めて欧米諸国から経済制裁を受けた国内経済の停滞により、国民から強い批判を受けたことが挙げられよう。

 しかし、ロウハニ師が必ずしもイラン国民から圧倒的な支持基盤があるわけではなく、また、国内の最高指導者ハメネイ師の支持を取り付けたというわけでもない。

 現在イラン国内で最大の権限と力を持っているのは、おかしなことにイスラム教シーア派に君臨するハメネイ師である。民主的な選挙によって選ばれた最高権力者の上に、実は国民の意思とは無関係の宗教最高権威者が存在するのだ。これではまるでイランは歪んだ二頭政治制度を実施していることになるのではないのか。現状はロウハニ師がハメネイ師の協力をどれだけ取り付けることができるかが、ロウハニ師の政治力発揮、つまりイランの動向を左右するという民主主義制度とは、まるでかけ離れた社会になっていることになる。

 現段階では、ロウハニ師がいかに経済面で諸外国からの協力を得るための外交交渉を始めても、欧米先進国をイランに経済制裁を課したのは、核開発を行い継続しているからであり、核開発を放棄しない限りイランと西欧諸国との外交交渉の進捗はあまり期待できない。

 イランは今後どういう外交を展開するのか、しばらく注視してみたいと思っている。

 さて、トルコ全土に拡大したデモが噴火してから早や半月以上が経過した。オリンピック開催地をアピールしているイスタンブールから始まったデモ騒ぎは、今ではトルコ全土に燎原の火の広がりを見せている。

 トルコはイスラム圏内で初めてオリンピックを自国で開催しようと国内最大都市にして、ヨーロッパとアジアの中継地・イスタンブールを開催都市として強くアピールしてきた。昨日もスイスのローザンヌで2度目の開催地のプレゼンテーションが開かれた。エルドアン首相も長期政権の中で自信を持ったのか、イスラム教徒が人口の90%以上を占めるトルコの一層のイスラム化を訴えていた。それはそれで他国にはトルコのイスラム化が強い伝播力を持って伝えられていた。

 ところが、トルコのこれ以上の過激なイスラム化が一部の若者の間で嫌われ、特に女子学生にスカーフ着用を義務付けた結果、若者を中心とする反発が反エルドアン行動となって跳ね返ってきた。これを押さえ込もうとした現政権と若者を中心とする層との間に拭い難い不信感が生まれ、デモ隊に対して警察力の行使となり、国がひっくり返るような大きな騒ぎとなってしまった。オリンピック開催候補都市としては、極めて心証の悪い社会状況となった。オリンピックも危うくなり、政府も慌て出した。

 しかし、昨日開かれる予定だったエルドアン首相とデモ隊リーダーとの話し合いは結局行われることはなかった。権力側は徹底して違法なデモ隊を根絶すると力の弾圧を口にしている。これでは正面衝突は避けられそうもない。

 この先両者の衝突は回避することができるのだろうか。そして、オリンピックはイスタンブールで開かれることになるのだろうか。

2013年6月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com