昨日発生したエジプトの軍部クーデターが世界中から注視されている。そのやり方があまりにも法を無視したものでショッキングだった。民主的に選ばれた大統領が、軍部によってその座を追われて身柄まで拘束され、憲法も停止され、マンスール最高憲法裁判所長官が暫定的に後釜に座るというドタバタである。しかもその荒々しい軍部の行動を反モルシ派が称えていることである。
今朝の朝日新聞には、全2面を含めて4頁に亘って詳細にモルシ大統領排除と軍部クーデターの原因と、今後のエジプト情勢の行方が取り上げられている。
部外者から見ると、民主的な選挙の下で選出された大統領が、何ゆえたったの1年で愛想尽かしされ、辞任を要求されなければならなかったのだろうか、理解に苦しむ。さらに国際的なイメージダウンにつながる軍部の介入が、何故行われなければならなかったのだろうか。この法衣の下に刀を隠すような軍の行動は、決していかなる国からも理解を得られるような行為ではないと思う。
アフリカやアラブ諸国では、まだまだ民主主義の歴史が浅く、それがまだ充分根付いていない。体裁は民主主義を取り繕っていても中身は未成熟で、軍部や強大な権力を持った個人によって支配されることが多い。まだ国家体制が未成熟なのである。エジプトもその例に漏れず、これまで長年に亘って独裁者と軍部による支配体制が続いていた。
今回のモルシ大統領失脚の原因は2つあるように思う。1つは、エジプト経済の悪化である。ムバラク前大統領が政権の座を去り、モルシ氏がその座に就いてから、反って経済状況が悪化した。それは必ずしもモルシ政権だけの責任ではなく、政情不安によって貿易取引が冷え込んだことや、主産業たる観光客が激減したことが影響していることにある。2つ目は、政権の支持母体であるムスリム同盟団の閉鎖体質にある。指導部の指令が上意下達で秘密性を帯びていたことである。
このクーデターについて、かつて宗主国だったイギリスのキャメロン首相は軍部の介入を支持せず、一日も早い真の民主体制へ移行することを求めている。アメリカは昨日のブログに書き込んだように軍の介入に戸惑いつつ、軍事費の打ち切りをちらつかせながら早い民政移管を望んでいる。
アラブ諸国の中でも、モルシ体制に近いトルコは厳しく批判している一方で、同じイスラム圏の湾岸諸国が軍の介入を歓迎している。まったく良く分らない政変である。