6101.2024年5月5日(日) 一時代を築いた大英帝国イギリスの落日

 最近先進首脳国G7の中でもやや存在感が薄くなったイギリスの国力が心配されている。1979年に就任したサッチャー首相が、「ゆりかごから墓場まで」と言われた戦後の福祉制度を抜本的に改革し、富裕層の税率を引き下げ世界中から富裕層をロンドンへ呼び込んで、首都ロンドンをニューヨークと並ぶ国際金融センターに作り替えた。だが、そのつけが、今日一般庶民に突きつけられることになった。その典型が国の交通インフラの中でも大事な道路が大分損壊し、修理が追い付いていないことである。道路上にぽっかり穴が開いて事故に繋がるケースが頻繁に起きているようだ。その他にも気泡コンクリートという建築材の安全性に疑問が投げかけられている。外気の寒暖により気泡が膨らんだり、萎んだりして硬さが一定していないらしい。その気泡コンクリートが、イギリスの玄関口ロンドンのヒースロー、ガトウィック両空港の滑走路にも使用されているというから航空機の滑走路上の事故に繋がりかねない。

 実は、去る2日イングランドの107自治体で地方選が行われたが、スナク首相が率いる保守党が、戦前に比べて議席数を半分にまで減らす大敗を喫した。議席数を何と472も減らしてしまった。その一方で、労働党は185議席を、自由民主党は105議席を、緑の党も73議席も増やした。同時に行われた市長選でも、現在のロンドンは労働党のカーン市長であるが、3回目の当選を果たし、他の市長選でも保守党は1勝6敗の惨敗だった。保守党の停滞ぶりは、すでに過去2回の地方選でも大幅に議席数を減らしている。

 こうなるとスナク政権の足元も怪しくなってくる。今年12月に下院の任期が終了するイギリスで、今年中に前倒しで総選挙が実施される可能性がかなり高いと思われる。その際スナク首相の保守党が政権基盤を失う可能性さえある。

 イギリスの社会インフラは、国の崩壊を象徴するものだとして、スナク首相もかなり深刻に受け止めているようだが、インドの大富豪の家庭に生まれ育ったスナク首相には、庶民の気持ちが充分理解できていないのではとの懸念がある。一時は、世界中に多くの植民地を抱え、その上がりだけで優雅に生きられた大英帝国も、第2次世界大戦後植民地が次々と独立してその恩恵を失う羽目になった。

 「福祉国家イギリス」の金看板だった国民保健サービス面でも、医療サービスが行き届かないと言う声が出ている。今イギリスでは、教育・医療機関、交通インフラでは、豊かになるどころか、「衰退」「貧困化」「金欠」を思わせる現象が顕著になっている。つまり、金融立国として世界中からいくらお金をかき集めても、国民や社会は必ずしも豊かにはならないということを近年のイギリスの実態が示している。

 戦後奇跡の経済復興を成し遂げた日本経済も、この30年間伸び悩んでいる。そのせいで日米の金利差もあるが、日本円の価値が下がり円安市場が続いている。同じように、かつて栄耀栄華を誇ったイギリスも、今や潤沢だった金融資産に底が見えて慌てていることだろう。

2024年5月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com