6094.2024年4月28日(日) 黒四ダム完成までの大プロジェクト

 昨晩NHK・TVで2000年に放映された「プロジェクトX  厳冬黒四ダムに挑む」の再放送版を観た。厳しい自然の中で、ダム完成までに実に7年の歳月を要し171人の殉職者を出した大工事だった。改めてその長い期間大工事に現場で働いた人たちの苦労を思うと感慨無量である。40年ほど以前に家族連れで、黒四ダムを訪れたことがあるが、それとは別に私自身にとって別の意味でダム大工事に触れた懐かしいメモリーがある。

 1959年7月だから大工事も中間点に来ていたころである。大学生となって山岳同好会部員として上高地から入り北アルプス表尾根を縦走し、鹿島槍ヶ岳近くの縦走路脇でテントを張り寝ていた夜に、縦走路尾根下のトンネルを出た辺りをダンプカーが何台も何台も大きなエンジン音を轟かせて行ったり来たりして、その轟音にしばし眠れないことがあった。その時噂で知っていた黒四ダムの工事ではないかと考えた。あの険しい山中で昼夜を分かたず、発電所建設のために多くの人びとが働いているのだと想像して、感動したことを想い出す。あれから4年後に黒四ダムは見事に完成した。

 その後書籍「黒部の太陽」が出版され、三船敏郎や石原裕次郎、宇野重吉、辰巳柳太郎、志村喬ら錚々たる名優が出演した同名の映画は大ヒット作となったことでも知られる。

 もうあれほどのマンパワーを注ぎ込んだプロジェクトは、今後恐らく計画されることはないだろう。多少現場近くの空気を吸ったこともあり、今も鮮烈に記憶に残っている誇るべきプロジェクトである。今では山へはほとんど行かなくなったが、あの黒四ダム建設大工事は、今も学生時代の最も印象深い山の想い出のひとつとして残っている。

 さて、最近アメリカ政府が日本へ陰で圧力をかけている事案が立て続けに起きていることに不信感を抱いている。ざっと挙げても3つほどある。

 ひとつは、先般岸田首相が訪米し、日米同盟の緊密な連携を日米双方で確約したときれいごとを述べていたが、その裏にある日米両国が日本周辺に緊急事態が発生した際の日米の軍事協力に関しては、明確には公表されていないが、日本の自衛隊がアメリカ太平洋地域統合参謀本部の指揮下に組み込まれる構想になっているらしいことである。これについては、政府は一言も説明しない。2つ目は、ドル高円安が亢進する外為市場において、日銀が勝手に為替市場で動くことは、G7加盟国の共通の考えに反するような言葉でアメリカがブレーキをかけていることである。3つ目は、日本製鉄が、昨年12月アメリカの大手鉄鋼企業・USスチールの買収を決めたことが報道され、同社組合のみならず全米鉄鋼労働組合(USW)が揃って反対し、あのトランプ前大統領が「ひどい話だ。私なら即座に阻止する。絶対にだ」と秋の大統領選を意識した発言を行ったことである。一方、バイデン大統領も4月13日に開かれた日鉄株主総会において買収が正式に承認されたことについて、アメリカの大企業であるUSスチール買収に否定的な姿勢を示した。大統領は一般的なアメリカ人の考えを述べたとされているが、労組から選挙戦の支持を取り付けることと、USスチールの地元であるペンシルバニア州の激戦区の選挙への影響を意識した発言と考えられている。目先の私利私欲を追い、民主主義の理念を否定するように政治家が民間の経営に口を出すような言動が、彼らには当然の権利であるかのように主張している。断じて許されるべきことではない。トランプ流に言って「絶対にだ」。

 最近のアメリカの言動や他国に対する干渉は、民主主義の根幹を損なうようなことばかりであり、とても容認できるものではない。同盟ではなく、こんな主従関係のような同盟国では、何を行うにせよ、宗主国アメリカの顔色を覗う植民地に日本は成り下がってしまうのではないだろうか。

2024年4月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com