6047.2024年3月12日(火) イギリスから離れていく英連邦諸国

 近年何かとそのあり方が問われているイギリス、旧大英帝国の植民地支配体制の崩壊が最近のイギリス王室への不信とともに、表面化してきた。それは、エリザベス女王の崩御とチャールス国王の即位により、一層はっきり表れてきた。

 現在英連邦王国はイギリスを含めて15か国あるが、その半分以上の8か国が集まるカリブ海域の連邦王国の内6か国が、数年内に共和制移行を問う国民投票を実施すると見られている。特にジャマイカとバルバドスでその動きは顕著である。植民地支配で虐げられてきた過去から抜け出し、政治的、経済的には君主国から完全に独立しているが、旧時代を象徴する立憲君主制を廃止して名実ともに独立国として独り立ちしたいというのが彼らの本音である。

 その大きなきっかけとなったのは、女王の死とチャールス国王の不人気、及びイギリス王室のスキャンダラスな噂である。カリスマ性のあったエリザベス女王に比べて、チャールス現国王は皇太子時代のダブル不倫とダイアナ元妃との離婚と事故死、更にヘンリー王子の王室離脱や王室内情暴露などで王室への畏敬は地に落ちた。

 2022年3月にウィリアム皇太子夫妻がジャマイカを訪れた際に、過去にイギリスが行っていた奴隷貿易への謝罪を求めるデモが発生したほどである。独立後55周年記念を迎えたバルバドスでは、2021年11月に当時のチャールス皇太子出席の下にメイソン初代大統領が選出された。君主制廃止の動きが加速し、民主主義の浸透、ナショナリズムの高まりとイギリス王室の権威低下によりその動きは益々勢いを増している。

 すでにイギリスの植民地下の圧政に苦しんできた途上国にとっては、立憲君主制であるメリットはほとんどなくなった。特に今世界に衝撃を与えているパレスチナ地区におけるイスラエル軍と、ハマスなどアラブ民族との間で争いが絶えることがないのは、ユダヤ人とアラブ人にそれぞれ独立の言質を与えたイギリスの二枚舌外交のせいであることは、今や国際社会では常識となっている。この他にも冷酷で悪賢い統治を行って中東、アジアだけでも、インド・パキスタンや、ミヤンマー、アデン、香港などで今日抗争の種となったりしている。

 最近のイギリス政府の存在感の低下は、過去の栄光に胡坐をかいて自ら学ぶことがなかったことが、国家としての成長を削いだのではないかと思われる。その点では日本の前近代的だった天皇制は、敗戦によってアメリカの支配により力関係を変えられたが、天皇をはじめ皇族方、そして日本国民がそれを厳粛に受け入れて、新生日本の立ち直りに順応させて民主天皇制を築いたのは、賢明だったと言えよう。よく考えてみるとイギリスの王室は、権威だけを頼りに住民の幸せとか、自由、平等に配慮しなかったことが今頃になって旧植民地からそっぽを向かれている大きな要因ではないかと思う。

2024年3月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com