6044.2024年3月9日(土) イスラエルに遠慮がちのアメリカ

 昨日アメリカ連邦議会で、バイデン大統領が恒例の一般教書演説を行った。事前に予想されていたことであるが、これまで何事につけ共和党のトランプ前大統領から悪口、非難を浴びていて、今度は少し仕返しをしたような演説である。民主主義の危機を訴え、ウクライナ支援の重要性を強調しつつも、11月の大統領選を意識して、返り咲きを狙う前大統領を激しく批判した。冒頭に大統領は国内外で自由と民主主義が攻撃されていると強調し、アメリカがウクライナへの軍事支援に消極的な姿勢から前向きな支援に変えれば、ウクライナは自由を守ることが出来ると述べ、議会場で拍手を浴びた。アメリカの支援が滞っていることがロシア軍を攻勢にしているとの共鳴が議会場にあったようだ。そして、民主主義の危機として3年前に連邦議会襲撃事件を起こした背後にトランプ氏がいたことと、それが失敗に終わったことに、政治的暴力は許されないことであると民主主義の勝利を訴えた。

 ウクライナについては、トランプ氏のロシアを自由にさせたら好いとの発言を取り上げ、それがプーチン大統領を力づけたと非難し、ウクライナからアメリカが手を引けば、ヨーロッパまで危険に曝されると主張した。その他に、パレスチナ・ガザ地区の争いと休戦、国内経済、国境問題、中国と台湾問題などについて述べ、自身の懸念材料である高齢については後ろ向きの発言はしなかった。

 今年の年頭教書はこれまでになく11月大統領選を意識して、ほぼ対抗馬がトランプ前大統領に決定しつつある状況から、トランプ氏のような口汚く批判することはなかったが、ライバルを非難したこともあり、あまり格調の高い大統領選になるとは思えない。アメリカの自由と民主主義が失われつつあることをバイデン氏の演説からばかりではなく、自然に感じられるのである。

 それにしてもアメリカは、パレスチナ問題ではイニシアチブを取ることが出来ず、ガザ地区住民を窮地から救いたいとの気持ちと、イスラエル国を支持する立場との狭間で頭を痛めている。基本的にはアメリカは国内のユダヤ人からの支援もあり、イスラエル寄りの姿勢を明確にしているが、イスラエルのガザ攻撃が非人道的でアメリカの本意に非ず、苛立ちながらもどうしたら次の一手を打ったら良いのか答が出せない状況にある。反勢力のハマスが潜むガザ地区は、イスラエル同様に壊滅させたいが、ガザ地区の住民を攻撃するわけには行かない。イスラエル軍が徹底して攻撃を加える中で、飢餓状態の住民を救おうと停戦に持ち込む気持ちをイスラエル政府に呼び掛けているが、同意を得られていない。止むを得ず食料などの救援物資の効果を上げるために、ガザ地区に港を建設し、そこへ船舶で救援物資を運び込もうと考えている。もう少しアメリカはイスラエルに対して、毅然と攻撃を控えるべきだとか、救援物資を陸路から送るべきだと主張すべきである。今ガザ地区では疲労困憊の住民が、食料を待ち望んでいる。10日ごろに始まるイスラム教恒例の宗教行事であるラマダンにより、住民が食物を口に入れることが一層難しくなる。アメリカは、イスラエルに対してもっと強いメッセージを送るべきだと思う。

2024年3月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com