いま東電福島第1原発の高濃度放射能汚染水漏れが猶予ならぬ事態に立ち至っている。漏れたのは、原子炉の冷却の過程で出た高濃度の汚染水である。ほとんど地下にしみ込んだとされていたが、先日はそれが海水へ流れ込んだというニュースがあったばかりである。
原子力規制委員会はこの事態を重大視して国際原子力事象評価尺度(INES)で8段階の上から5番目の「レベル3」(重大な異常事象)に相当すると発表した。その報告に基づいて昨日規制委は、福島第一原発に立ち入り調査をした。あまりにも東電の報告が変更に次ぐ変更で変わりやすく信用できないと自ら調査に乗り出したのである。その前段階として、19日に東電から少なくとも120㍑の汚染水が漏れているとの報告を受け、それは「レベル1」(逸脱)に当ると暫定的に判定していた。しかし、その報告の翌日にはタンクから漏れた量が早々300㌧に修正された。これを受けて規制委が評価を見直したものである。INESの評価尺度では、福島第一原発やチェルノブイリ原発事故が最上位の「レベル7」と評価されたのを筆頭に、過去の原発事故がランクづけされている。
福島第1原発は現在廃炉への道を急いでいるが、一向にゴールが見えない。問題山積でこのままいつまでも排出される放射能を処理できず、この危険な状態が続くようだと国民の間にも嫌悪と諦め、そして失望感が生まれてくるのではないかと心配される。
政府は原子力を国のエネルギー政策の根幹として捉えてその高い技術力を買いかぶり、海外諸国へ原発の売り込みを図っているが、頭のハエを追えずに他国で商売しようとはあまりにも商業道徳に悖るのではないだろうか。そのため、政府の対応にはことさら福島原発事故を過小評価しようとの腹の内が透けて見える。
現時点では原発中止は考えていないようで、虎視眈々とその再稼動のチャンスを狙っているようだが、福島原発の処理が思うに任せず、収束までにどのくらいの時間がかかるのか見当もつかないようだ。そのうえこの杜撰な東電の処理作業に対して、海外メディアから日本が収束に向けて真剣に取り組んでいないと非難される有様である。
こんな最中に22日付朝日夕刊にチェルノブイリ原発の事故処理に関する記事が掲載されていた。事故を起こした4号炉が、高い放射線量に阻まれ手がつけられず、コンクリートで覆った石棺も崩壊して放射能が飛び散らないよう、さらに巨大なシェルターの建設が進められている。ところが、この4号炉が相変わらず強い放射能を放って近づけない。その廃炉作業のメドは立っていないという。1~3号炉については2064年までに廃炉作業を終える予定だという。気の遠くなるような話ではないか。問題は、事故当時建設中だった5、6号炉がそのままに残されていて、事故直後に放射能に汚染された瓦礫や機器が運び込まれ、廃墟のままになっている。このまま放置すると倒壊する危険性があるようだが、撤去のメドはまだ立っていないそうだ。つまり、現状は放射能が放出されるまま放ったらかしにするようである。どうにも厄介で無責任なことになっている。事故処理作業は勇断を持って急いで進めなければならない。
将来事故の危険性のある原発の新設は、各国ともここらで中止するという勇気を持てないものだろうか。