2420.2013年12月28日(土) 安倍首相靖国参拝で四面楚歌に

 安倍首相の靖国参拝が大きな問題となっている。世界中が首相の行動を非難していると言ってもいい。それだけ国際政治に緊張感をもたらすような言動を、なぜ首相本人のみならず周囲が止めることができなかったのだろうか。

 まず、首相本人は自分としては信念を貫き、自信を持って行動すべきだと考えていた。そのタイミングを狙っていた。偶々昨日総理大臣就任1年を迎えてタイミング的にピタリだと考えたようだ。

 しかし、その信念そのものが爆弾を抱えた問題であることが苦労知らずの本人には分っていない。戦争で国家のために亡くなった戦没者への哀悼の気持ちが強くなり、その人たちに対する尊崇の念が高まっていった。首相にはこの気持ちは日本人ならずとも世界共通の気持ちであり、国の犠牲者のためにお参りするのは、世界のリーダーが誰でも行う共通の作法であるとまで信じ込んでいた。

 首相もこれだけの反発は想像していなかったようだ。とりわけ同盟国アメリカとEUの非難にはびっくりしているようだ。だが、これこそお坊ちゃん首相のノーテンキぶりの面目躍如ではないか。

 気になるのは、安倍首相は自分で考え抜いたのではなく、戦犯だった祖父岸信介の気持ちや周囲の大人たちから影響を受けていることである。確かに戦争で生命を落された方々に対しては、国家として慰霊することは当然である。

 しかし、戦犯として日本を戦争に導き日本人のみならず、他国で多くの人々の命を奪い、多くの苦しみを与えたことは、許してはならない。故に罪の重い戦犯は国際法廷で断罪された。靖国にはそういう戦犯も祀られている。この点をはっきり分けて考えないといけない。首相の信念には一般の戦没者と同時に戦犯に対しても尊崇の念を感じているようだが、これが根本的な靖国参拝の間違いである。

 だからこそアメリカの国務長官と国防長官の来日時には、両長官は靖国神社へ参拝せずに、戦犯が合祀されていない千鳥が淵墓苑に参拝された。安倍首相がオバマ大統領もアーリントン国立墓地へ参拝するのと同じだと米紙に話したことに対して、敢えて両長官が本質を教えてやるかのように千鳥が淵へお参りした意味が首相にはよく分っていなかったようだ。

 首相は充分話せば理解してもらえると勘違いしているようだが、アメリカはただ失望しているばかりで、今後よほどのことがない限り間違ったナショナリズムを振り回す人物だと捉えられるだろう。民主党時代にやや奥歯に物が挟まったかの感じがした日米関係を元へ戻すと張り切って短絡思考的に考え行動した結果が、同盟国アメリカからも愛想を付かされかねない雲行きになってきた。安倍首相の罪は重いと言わざるを得ない。

 今朝の朝日新聞紙上にアメリカ外交問題評議会上級研究員のシーラ・スミス氏が安倍首相の行動を手厳しく批判している。中韓に対して外交努力に取り組むと考えていたが、そうではなかった。首相の行動は合理的な政策目標の追求よりイデオロギー的な動機に基づき、国家主義的な目標を追求しようとしている。それは日本の政治的な選択肢を狭めることにつながり、新しい安全保障環境への戦略的な適応が極めて重要な時期に日米の同盟関係を複雑にする。とまあこんな調子である。

 結局子どもの頃から周囲には、大臣クラスの人がうようよいて彼らと同じ空気を吸い、自分ではあまり勉強しないうちにある種の考えだけを刷り込まれ、甘やかされ、何の苦労もなく今日に至った結果が歪んだ発想を生み出す素になったのではないか。

 こういう一般とは別の人種がトップに君臨することは怖い。1強多弱の政界分布図ではあるが、この状態が続くようだと同じようなチョンボを再びやりかねない。早いところ安倍首相のような人物を政界から勇退させてもう少しバランス感覚がよく多面的に国家・国民のことを真剣に考えてくれる人にトップとして国をリードしてもらいたいものである。

 アベノミクスなんて調子のいいことを言っているが、言ってみれば、とんでもない食わせ者だったということである。

2013年12月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com