年末に際し考えさせられる。昨年12月の総選挙で圧勝し、7月の参院選でも民主党を破りねじれ現象を解消した自民党はいまや1強多弱の1強となり、向かうところ敵なしの勢いである。こうなると我々国民にとって怖いのは、批判を恐れず自分たちが佳しと考えれば何でもやってしまうことである。
アベノミクス・ムードで一般庶民の感覚は別にして、今年の数字上の景気は確かに良くなった。今日の大納会で株価は9日連続して上げ続け、対先週末112円37銭高、日経平均16,291円となり昨年同日に比べて5,896円高、年間56.7%の値上がりぶりである。何と7年ぶりの高値で終わった。調子づいて大納会に立ち会ったのは、歴代首相の中では今日の安倍首相が初めてである。来年も「アベノミクスは買いです」とすっかりのぼせ上がっている。
これだから安倍首相は何でもござれとばかり、反発を予想された靖国参拝も意に介さず強行したのだ。その結果は、中国や韓国からの非難ばかりでなく、西欧諸国やロシアからも反発を買っている。しかも最大の誤算はアメリカに対立ムードを煽っているとして失望感を与え、日米間に隙間風が噴出したことである。国のトップが先頭に立って、外交関係を悪化させ、国益を失わせようとしている。こういう不遜な総理大臣は、何とかレッド・カードを突きつけて退場を促したいところだ。
沖縄普天間米軍基地移設問題などの難問も抱えたこの時期に、少々脚光を浴びていなかった原発再稼動問題が、11月に小泉前首相の原発ゼロ発言で勢いを削がれ、原発廃止の方向に向かっているのかと思いきや、むしろ原発推進派が力を得て国会議員電力族の間に徐々にネットワークが構築され、脱原発の声はかき消されそうだという。確かに国会議員は自民党議員が圧倒的多数を占め、国会内だけ見れば原発ゼロ派は少数派になった。
自民党内に電力安定供給推進議員連盟なる原発推進派のネットワークが結成され、いまではその数は140人を超える。自民党全国会議員の約3分の1を占める。彼らの出身はほとんどが原発のある選挙区だ。原発を稼動しないと生活が維持できないと考える住民の支持を受けて、自分と住民のために動いている。
彼ら原発推進派の戦略は、「再稼動を求め続ける。電力会社も廃炉を決めずにほとぼりが冷めるのを待つ。そのうち、原子力規制委員会のメンバーも入れ替わる」と原発再稼動のためにしたたかである。世論調査によれば、小泉元首相の原発ゼロへの支持は60%もあった。しかし、利益誘導型国会議員の増加と戦略により国民の支持を受けた原発ゼロ政策には大きな壁が立ちはだかっている。原発推進派は国が安全対策を講じれば、稼動は問題ないと考えているが、国の安全対策がどのくらい安全なのか分っていない。100%以上の安全なんて考えられないことぐらい分りそうなものだ。しかも、排出される使用済み燃料のゴミ処分の方法、特に処分場所がまったく不明瞭で未解決だというのに、なぜ原発を推進しようというのか。自分たちの利益のためだけではないのか。
現状のまま来年も同じ状況が引き継がれていくなら、いずれわが国も大変大きなリスクを負うようなことになるのではないかと強く危惧している。