懸念していたことが現実となった。いま執筆して関係者に原稿をチェックしてもらっているノン・フィクション作品中の1章「森喜朗に贈られた無人島の怪」を当該の森元首相が削除してほしいと言ってこられた。昨日秘書から電話があり、その校正文が今日送られてきた。さぁ、困った。全体的にこの章も興味深く盛り上がる1章であり、元首相の言い分は分らないこともないが、この内容をカットすると作品としての魅力を減じることにもなるので、できれば撤回してもらいたいと思っている。
ある程度こう言ってこられることを予測はしていた。元首相が気に入らないのは、次の理由による。
主人公の大酋長が自分の故郷へ向かう船上で旧トラック島を訪れた森元首相に目の前の無人島を贈呈すると申し出て、元首相も感激したとこれを受け入れ、すっかりその無人島が森家のものになったと元首相は私にも嬉しそうに話したのが、2年半前のことである。ところが、昨年6月旧トラック島を訪れ、大酋長の娘ナンシーさんと関係者にその島の存在について尋ねてみたが、その島の存在について地元ではナンシーさんを始め誰も知らず、本当のところはどうなのかと疑問を投げた。すでに大酋長が黄泉の国へ旅立った現在真相の確認は難しいと疑問視したのが、ノン・フィクションのあらましである。
故人にコケにされたようになったことが明らかにされ、元首相にとって不本意でありプライドが許さないことは理解できるが、私としては事実に基づいて書いたので、そう簡単に引き下がるわけにはいかない。
ただ、一方で当人が気に入らないと言っていることを強引に突っ走る気はないし、総理大臣、また代議士を辞められても依然として実力者として安倍首相も頼りにされているくらいのパワーを持っておられる方なので、一応敬意を表して当方の主張を申し上げ再考していただくことを期待しつつ、万一にも納得されないようだったら、該当箇所の削除も止むを得ないかも知れないと考えている。
やはり一番心配していたことが当ってしまった。取り敢えず明日森喜朗事務所の長谷川秘書に電話してみようと思うが、些か憂鬱である。