毎年第一生命が募集している「サラリーマン川柳コンクール」応募作品の人気投票の結果が発表された。今年は「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」がトップだった。うまいこと言っているなぁと感心する。ベスト10の中で私が特別関心を抱かされたのは、7位にランクされた「決めるのは いつも現場に いない人」である。現場を知らずに知ったかぶりをして間違った決断をする人がいかに多いかをズバリ言い当てている。政治家とか、高級官僚らはこの種の典型的な人間ではないだろうか。
実は、今日駒沢大学の講座「現代ジャーナリズム入門」で元読売新聞記者の講師から、仮に人命が危機に晒された時、人命救助に向かうか、ジャーナリストとして取材を続けるかと受講者に問われた。それぞれ2通りの回答に分かれた。私はどちらとも答えなかった。そしてその後私なりの考えを述べた。
私の考えはこうだ。平静な場で緊迫感も切迫感もない時には、二者択一を判断することはそれほど難しいことではない。だが、そうではない精神的に追い詰められた状況にあっては、ジャーナリストであろうとなかろうと冷静な判断を下すことなんてとても至難の技である。そこで私自身の厳しく追い込まれた海外における体験談を話した。私が1967年戒厳令下のアンマンで不意にヨルダン軍に身柄を拘束された時の臨場感と恐怖感は、まったく冷静とはかけ離れたもので自分はどうすべきか、どうしたら良いのか、連行される途中で自分はどうなるのか、まったく見当もつかなかった。その時私の判断力は完全に失われていた。精々怪しい奴ではないということを知ってもらうことだ程度の考えしか頭に浮かばなかった。そんな追い込まれた体験から会得したことは、危機感の溢れる厳しい現場ではとても正しく冷静な判断を下すことは困難であるということである。それが私の考えであり、話したことである。講師はもちろん、他の受講者にも理解してもらえたようだった。
先週は講座初日だったが、身勝手に休んでしまい、この講座ともうひとつの講座、TBS女性キャスターによる「TVキャスター・記者が取材した現場」を聴講したのは今日が初めてだった。2講座とも中々興味深い内容なので、これからも楽しみにしたい。