財務省が今日発表した2013年の貿易統計によると、貿易収支は11兆4千億円の赤字だった。過去3年連続して赤字で、月別だと18カ月連続赤字だという。貿易立国も色褪せたものである。
最大の原因は全体の輸入額の2割超を占める原油輸入が16.3%も増加したことが挙げられる。しかも円安の影響を受けて原油料金が上がった。輸出が好調である割に、輸入量も増えてその恩恵はさほど多くはない。そのうえ日本製品が売れても日本の製造業の生産工程が海外へ移出しているからだ。例えば、東芝や日立の白物家電製品はいまでは国内で生産されず、すべて海外の自社工場で作られているという。
いずれにせよ、アベノミクスで経済は潤っていると喧伝されている一方で、このようなゆるがせにできない貿易収支赤字問題が惹起している。わが国の財政が厳しい折に今後貿易収支の赤字傾向が加速されるなら、国家財政を直撃することになる。
ところが、それに拍車をかけるように、先日のダボス会議で安倍首相は法人税引き上げに言及した。41%のアメリカを除けば、先進国の法人税課税は大体25%内外であるが、首相は日本の法人税38%強をできるだけ下げて海外からの投資を呼び込みたいと述べて、海外メディアで好評を以って伝えられた。
これに対して今朝の朝日社説では、「法人減税論議・いいとこ取りはダメだ」と首相の拙速な持論に疑問を投げかけている。実際国内でも麻生太郎経産相が苦しい財政状況を考えれば、法人税減税はいかがなものかと納得していない。もう少し首脳同士で話し合うことができないものか。
先進国の中で最悪の財政状況の実態をもう少し精査して、そのうえで政府内の議論を活発に戦わせ外部に発表してもらいたいものである。