5476.2022年8月18日(木) 森英恵さんの死に「スパイ・ゾルゲ」を想う。

 日本のファッション界をリードし、パリで世界的ファッション・デザイナーとして活躍された森英恵さんが、去る11日96歳で亡くなられた。つい先日同じくパリのファッション界で活躍されていた三宅一生氏が亡くなられたばかりである。

 実は、私には森さんに縁のような小さな想い出がある。2003年篠田正浩監督の映画監督引退作品「スパイ・ゾルゲ」が公開された折、ゾルゲの仲間だったブランコ・ド・ヴケリッチの妻、山崎淑子さんと遺児である友人洋さん母子が試写会に招かれた。友人はわざわざベオグラードから一時帰国して試写会に出席した。試写会の数日後洋さんと会った時、彼から思いがけない話を聞かされた。映画では母親は和服を着ていたが、実際に母が結婚前の父と初めて出会った時は洋装だったと聞いた。彼にはそれがどうも納得がいかないようだった。

 その数日後、篠田監督をよくご存じの小中陽太郎氏に、その事実をお話しした。すると小中さんは早速篠田氏へ連絡を取られて事実関係の疑問について尋ねられた。その疑問に対して篠田氏はこう応えてくれたという。事実はそうだったかも知れないが、映画の衣装担当だった森英恵さんが、それを承知のうえでこの場はヴケリッチの恋人は、和服の方がストーリーの流れや雰囲気上しっくりいくと主張された。森さんからは、恋人役には和服を着せて欲しいと要望され、母親淑子役の女優小雪に和服を着てもらうことになったという説明だった。小中さんから伺った和服に替えた真意を山崎洋さんに伝えたところ、彼も納得してくれた。舞台裏ではそんな経緯もあったのだが、映画でより一層効果を狙えば、時には事実を歪めることあるということである。

 その後この映画を鑑賞したが、戦時中のスパイ事件で気持ちが暗くなりがちだったが、大筋はフィクションではないので、歴史上ゾルゲ事件の理解にも参考になった。

 この服装変更の件については、ネットのWikipedia「スパイ・ゾルゲ」項に次のように説明されている。「ヴケリッチの妻である山崎淑子(2006年死去)は当時存命で、子息である山崎洋(彼も生誕間もない姿で本作に登場する場面がある)とともに試写会に招かれている。ヴケリッチと淑子が出会う場面で淑子は和装であるが、史実では洋装であった。これに関しては衣装担当の森英恵がそれを知った上で和装にするよう篠田に勧めたという」と明確に解説されている。

 さて、連日のようにアメリカ大リーグ(MLB)・エンジェルスの大谷翔平選手の活躍が、スポーツ番組だけに留まらず、その日のニュース番組でも大きく取り上げられるほどである。このところ不振なチームの中で大谷選手の活躍だけが目立ち、スポーツ記者から大谷以外のチームメートは大谷に付いていけないとまで酷評されている。大谷は先日ベーブ・ルース以来104年ぶりとなる二刀流として2桁勝利、2桁本塁打を記録し、最近の5試合では18打数で2本の本塁打を含む10安打の打率0.526の活躍だったが、チームは最近3試合で25失点を喫している有様で、とても勝てるチーム状態ではない。今や大谷選手は、イチロー、松井喜を凌駕する活躍ぶりだとして、大リーグ記者の間からも絶賛の声が上がっている。

 かつて、MLBで史上最多の4,256安打を記録したピート・ローズが、イチローが日米通算3千本安打を記録した時、日本のプロ野球は中学生レベルなので、とてもMLBと同等には扱えないと辛辣な感想を述べたが、今では、中学生レベルの方がプロを上回ったのではないか。随分日本人選手も活躍するようになったものである。大谷選手の活躍を、今ピート・ローズはどう見ているだろうか。ハッハッハ!実に愉快である。

2022年8月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com