5448.2022年7月21日(木) 興味深いイギリスの次期首相選出過程

 去る13日に混乱の母国スリランカから国外へ逃げ出した無責任なラジャパクサ前大統領に代わって、昨日議会は議員投票の結果、後任大統領にウィクラマシンハ首相を選出した。同国ではコロナ禍の中で経済運営に失敗し、物価の値上がりが激しく政府に対して国民の間に激しい抗議活動が続いていた。前大統領の下で首相を務めていた新大統領にも、国民の間から反発の声が出ており、今後スリランカが立ち直れるのか、世界の目がウクライナ情勢に向いている中で先進国から支援も期待出来ず、この国の前途は多難である。

 一方、イギリスでは個性的な言動やスキャンダルが話題になっていたジョンソン首相が、自ら撒いた種により辞任を表明してから後任首相の選出に向けて後継者争いが繰り広げられている。保守党内の有力候補者8人が名乗りを上げたが、これまで保守党所属の下院議員によって5回の予備投票が行われた結果、候補者が徐々に絞られ最終的に2人の候補者が残った。過去5回の予備選で常にトップだったスナク前財務相に対して、女性議員のトラス外相である。予備選の都度脱落者が出る中で、スナク前財務相は安定した得票を重ねているが、一方のトラス外相は回を重ねるごとに得票の上積みが、スナク氏を上回る勢いである。2人の決戦投票は、保守党議員ばかりでなく約20万人といわれる全国の保守党員が投票するため、これまでの予備選とは異なった結果が生れる可能性がある。今後2人の候補者は党内向けのキャンペーンを展開して、9月5日に新しい党首と次の首相が決まることになる。

 この党首選挙が興味深く思われるのは、42歳の若さながらも首位を突っ走る行動力のありそうなスナク前財務相がその出自の故に、堅実に得票を伸ばしてきた46歳の現役外相に勝利することが出来るだろうかという点である。実際2人の一騎打ちでは、世論調査によれば、54対35でトラス氏有利と出ている。長身で立ち居振る舞いもスマートに見えるスナク氏は意外にもインド系で、決戦投票に勝つようなことがあれば、アジア系で初めてイギリス首相となる。この旧植民地出身者が自分たちの国の総理大臣になることを、誇り高い旧大英帝国の末裔たちのメンツが素直に許すことが出来るかどうかが問われることにもなる。他人事ながら9月の投票結果が待ち遠しい。

 さて、昨日全国的にコロナ新規患者が急速に増えたが、今日も全国で186,229人の感染者は2日連続過去最多である。東京都でもこれまで想像も出来なかった3万人を超える31,878人の新規感染者が出るほど、35都府県で過去最多だった。プロ野球の巨人軍から57名の感染者を出して、明日以降の対中日3連戦が中止と決まり、今名古屋場所中の大相撲でも力士の2割が感染したという。このような以前には見られなかった異常な事態に対して、国や自治体が直ちに具体的な感染抑止対策を打ち出そうとしないことが理解出来ない。

2022年7月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com