5445.2022年7月18日(月) 芥川賞5作品候補者がすべて女性とは!

 20日に今年度上半期の芥川賞と直木賞の受賞者が発表される予定である。その内公表された芥川賞5候補作品のすべてが女性作家によるものである。近年女性作家の作品が授賞するケースが目につくようになったが、すべての候補作品が女性になるのは、1935年同賞創設以来のことである。因みに直木賞もノミネートされた5作品のうち4作品が女性によるものである。

 ジェンダー問題がしきりに話題になる時代であるが、その点では文学の世界はジェンダーとは無縁と言っても好い。日本ペンクラブも島崎藤村・初代会長以来18人目の会長として、昨年初めて桐野夏生・女性会長を選出した。

 ただ、個人的な考えであるが、女性作家が女性の視点からいろいろなタイプの作品を書き、文学的価値は別にして必ずしも魅力的な作品はそれほど多いようには思えない。特に、2003年の金原ひとみ著の芥川賞受賞作「蛇にピアス」と、同時授賞の綿矢りさ著「蹴りたい背中」は、いずれも読んでいてまったく興味をそそられなかった。狭い若者の世界で男女間の異常なセックスだけに拘ったような作品で、それらを読んだ時、これが果たして文学作品に値するものかと賞選考に疑問すら覚えたものだ。爾来毎年3月号と9月号に芥川賞と直木賞受賞作品が掲載される「文藝春秋」を読む気分になれず購入しなくなった。

 人格的な問題は別にして山崎豊子、或いは瀬戸内寂聴の作品に興味深いものはある。1993年芥川賞受賞の作家多和田葉子のようにドイツを研究し、長らくドイツに居住してドイツを知り尽くしているような作家が、ドイツの平凡な日常生活について非日常的に取り上げている最近の作品も、実は筆者の意図がよく分からない。実は、彼女が今年2月から朝日新聞朝刊に連載している「白鶴亮翅(ハッカクリョウシ)」というタイトルの作品は、ドイツの自分の交遊範囲の個性的な知人と他愛ない出来事を書き連ねているだけである。後半部でドラマチックな展開があるのかも知れないが、当初はタイトルの意味も分からず、途中で読むのを止めようと思ったくらいであるが、連載4か月後になって漸く文中にタイトルの説明があった。

 中々難しい言葉だが、「白鶴亮翅」とは、「白い鶴が羽を広げる」と言う意味で、安定した「白」と「亮」は建築物のしっかりした骨組みを伝え、「鶴」と「翅」は煌びやかな装飾模様を加えているということで、豪華な邸宅の様子を表しているということを言っている。だが、ストーリーとのつながりが分らず、今日まで163回の連載を読んでいて身の回りの現実を描いているのだが、どうもピンとこない。

 現在の読者離れの傾向からすると小説は、益々面白くなくなりそうな予感がする。書籍類の販売が落ち込んでいる現実に、すでにその兆候が表れているように今後一層書籍類の販売が伸びなくなるのではないかと気にかかっている。少々子どもじみていると思っているが、学生時代に国内外ものを問わず夢中になった大河小説が、やはり興味津々で歴史的にも勉強になり、それこそがリアルに時代と文化を感じさせ書物の醍醐味を抱かせてくれるのではないかと思っている。むさぼり読んだ「戦争と平和」「静かなるドン」「復活」「モンテ・クリスト伯」「風とともに去りぬ」「三国志」や、「夜明け前」「坊ちゃん」「新平家物語」、司馬遼太郎ものなどが懐かしい。

2022年7月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com