5419.2022年6月22日(水) オリンピック、無駄遣いによる負の遺産

 昨日昨夏開催された東京オリンピック・パラリンピックの最終収支書と公式報告書が公表された。コロナ禍で開催が1年延期され、ほとんどの競技が無観客試合となり、大きな収入源として見込んでいた入場料収入が計算出来なくなった。それを支援した関係者やボランティアの努力もご苦労であったと思う。やはり懸念されたのは、大会の無事開催と開催に伴う収支勘定であったが、五輪・パラともに開催は成功だったし、赤字ながらも表面上は何とか当初の予定通りの帳尻合わせは出来たようだ。近年は開催ごとにオリンピックは派手さが増し華美となり、2014年にロシアで開催された冬季ソチ大会では、俗に5兆円の大会経費を要したとされ、招致熱が冷え込みつつあった。そこへ東京大会ではコロナ禍が拡大し、大会自体も中止、或いは延期など論議されたが、結局1年延期ということで昨夏規模をやや控え目にして開催された。

 東京大会開催が決定したのは、2013年だったが、経費の削減を図る一方で、すでに競技施設が存在しているにも拘わらず、敢えて新規に近代的な競技施設を建設する無駄がかなりあった。どうしてこういう無駄な出費をするのだろうか。1964年東京大会開催の折に建設された競技施設が、まだ充分使用出来るのに、敢えて新施設を建設し、挙句にそれが今後負の遺産になるというのだから、話にならない。自宅近くの駒澤オリンピック記念公園内には、鬼の大松監督が金メダルを獲ったバレーボール会場をはじめ、オリンピックに使用出来る施設がいくつかあるのに、どの施設も今大会では使用されなかった。恐らく新競技施設建設は、一部関係者の利権?が絡んだ私利私欲によるものなのだろう。

 その典型として最も首を傾げざるを得ないのは、水泳会場として晴海に新たに建設された東京アクアティクスセンターである。この目と鼻の先に、これまで日本選手権などメインイベントが開催されていた東京辰巳国際水泳場がある。1993年に完成したばかりで、つい最近までは東京大会の会場と考えられていた。報告書によると、今後いずれの施設も厳しい決算が予想され、東京アクアティクスセンターは今後とも日本選手権や、国際的イベントのために使用されるが、同じ水泳施設の東京辰巳国際水泳場は、今後アイススケート場に転用して使用されるという。

 大会運営自体は、すべての面で流石日本ならではと世界中から高く評価され、メンツを保つことは出来たが、少なからずトラブルもあった。開催前に大会組織委員長だった森喜朗氏の女性軽視発言や、ロゴの偽商品など、多くの障害を乗り越え、やや窮屈な大会の中で、日本国内は言うに及ばず、世界中から大会の成功と受け止めてもらえたのは、日本国民のオリンピック精神の信頼と、人類愛の賜物だと誇りにしたい。

 気になるのは、東京大会のために建設された各競技施設が、今後負の遺産となり兼ねないことである。各種の競技施設を維持するために、毎年相当額の補助金を補填しなければ、施設が立ち行かなくなる。少なくとも既存の競技施設を極力使用することに、熱心であって欲しかった。オリンピックは自分たちのもので、自分たちがオペレートするのだとの気概はあったが、自分の財布から金を出さず、他人の財布だけを当てにしていたのが、今大会関係者の腹の内だろう。

2022年6月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com