5418.2022年6月21日(火) 日本の「核廃絶橋渡し役」は無理と批判

 4月に大統領選が行われ、再選されたフランスのマクロン大統領は、ホッとして外交問題に注力しているように思っていたところ、一昨日総選挙が行われ、何とマクロン氏率いる「共和国前進」を主とする与党連合は過半数を大きく割る大敗を喫してしまったのだ。驚くのは、与党連合が前回5年前には過半数(289)を遥かに上回る350議席を獲得したにも関わらず、今回は100議席以上も失い、過半数より遥かに少数の246議席しか獲得出来なかったことと、対照的に野党が大きく躍進したことである。

 野党の中でも、2か月前大統領選でマクロン氏と決戦投票で争ったルペン氏の右翼「国民連合」は、前回は僅かに8議席だったが、今回は前回の10倍を超える89議席を得て、野党第1党となった。極右とやや警戒され気味だった前身の「国民戦線」から党名を変えて、国民の気持ちに寄り添う、物価高に苦しむ庶民を照準に、ガソリンなどの消費税を20%から6.5%に引き下げることや、定年の引き下げも提唱する政策を掲げたことが支持を得られた要因であろうか。ルペン氏は物価高対策に重点を置いており、対ロシア経済制裁にもフランス国民の生活優先として、対ロシア対策には慎重である。他にもルペン氏は、北大西洋条約機構(NATO)の指揮系統から脱退を主張して自衛と関係のないフランス軍の派遣に消極的で、今後こうした防衛戦略をめぐりマクロン政権と議論が活発化することが考えられる。いずれにせよ大統領に再選されたばかりで、外交に力を入れているマクロン大統領にとっては、思わず厳しい政局運営を迫られることになるだろう。

 さて、核兵器禁止条約の第1回締約国会議が今日から、ウィーンで始まった。昨日開催された「核兵器の人道的影響に関する会議」には、外務省の担当課長らが出席した。だが、日本は62か国が批准した同条約には未だ批准していない。それでもオブザーバーとして参加することは出来る。ロシア軍のウクライナ侵攻で、プーチン大統領が度々核の使用を示唆するような発言をして、過去にこれほど核使用の危機が叫ばれたことはない。この機にNATO加盟のドイツやノルウェー、ベルギー、オーストラリアら33か国がオブザーバーとして参加した。

 しかし、日本の岸田首相はオブザーバーとして出席しない。その言い分が奮っている。「核兵器国は1国も条約に参加していない。日本は核廃絶のための橋渡し役を務める」と言っていたが、その橋渡し役がオブザーバーとして、意見を聞けるチャンスをみすみす逃していることに、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のフィン事務局長は呆れて、唯一の被爆国日本は「橋渡し役」にはなれないと厳しく批判した。一方で、ICANは会議に先立ち「市民社会フォーラム」を開き、日本原水爆被害者団体協議会の木戸季市事務局長が、5歳の時長崎市内における被爆体験を生々しく話し会場で大きな拍手を浴びていた。

 さて、この核廃絶の動きを、ただ日本はアメリカの核の傘の下にいるからと安閑としているようだが、幾分真剣味が足りないようだ。今の世界の危機的な情勢から考えて岸田首相はもっと深刻に受け止めるべきではないだろうか。

2022年6月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com