最近テレビで若いタレントが話す言葉の粗雑さというか、下品な表現にうんざりしている。自分自身の言葉遣いも自慢できる筋合いではないが、それにしても今更ながら大宅壮一がかつて「テレビというメディアは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると、人間の想像力や思考力を低下させてしまう」として「一億総白痴化」という言葉を発した気持ちがよく分かる。
一番嫌な言葉は、「そっちのヤツ」とか、「青いヤツ」というように、はっきりした名詞で言えば良さそうなのに、「ヤツ」という下品な代名詞で表現することである。それが、若いタレントが平気でそう言い、それを誰もが当たり前のように受けて、また別のタレントが同じように「~ヤツ」と言うことである。それもよく聞いていると女性タレントに多い。いつから女子タレントはこんな汚い言葉を話すようになってしまったのだろうか。大宅が嘆いたように、テレビ界で活躍する人たちが白痴化してしまったと考えざるを得ない。
かつて、年配者のグループに同行してヨーロッパに行った時、アテンドしてくれた年配の女性ガイドさんの言葉遣いが正しいきれいな日本語で、グループの人たちがきれいな日本語ですねと感心していたことがある。このガイドさんは、正しい教育を受けて正しい日本語を学んでからヨーロッパに来てガイドを務めていたが、きっと良家の出身できちんとしたしつけを受けたのではないかと噂をしていたことがある。その時ツアーの雰囲気が高級でクリーンな感じになったものである。これはひとつの例にしか過ぎないが、テレビで視聴者に向かって汚く、乱れた言葉を遣われるとついそのタレントから馬鹿にされたような気になるものだ。
今日ひとりの詩人が亡くなった。先月13回忌を済ませた亡父より1歳お若いまど・みちおさん、享年104歳である。童謡「ぞうさん」「やぎさん ゆうびん」「1ねんせいになったら」などの名作を残して逝かれた。ほとんど平仮名の優しい言葉で、丁寧に、分かりやすく、人の心情に触れる素晴らしい詩をたくさん書いた。童謡で心が洗われるような気持ちになった。それに比べて何と「~ヤツ」という言葉の下劣さよ。