日本の経常収支が悪くなる一方で、貿易立国も危険信号を表し始めた。特にわが国の生命線でもある貿易収支も大きくへこんで当分好転する兆しも見られない。その大きな原因は、①円安、②原油の輸入が増えたこと、と分析されている。
月刊誌「選択」3月号の冒頭インタビューの中で、佐藤隆三・ニューヨーク大学名誉教授が経常収支の悪化は短期的に日本にとって悲観的であると語っている。佐藤教授は1965年ブラウン大学教授になって以来今日までほぼ半世紀に亘ってアメリカの大学で教鞭をとっておられ、世界経済についてよく知る経済学者である。1931年生まれだそうだから、失礼ながら相当なお年であるが、それだけに長年に亘って国際的な視点から経済の流れを注視してこられた。その佐藤教授が日本の現状について厳しく分析している。
やり玉に挙げたひとつは、メーカーの生産拠点を海外に移したことに対してである。正規雇用が減り、非正規雇用者が増える傾向になる中で、雇用がなくなり生産性の高い産業が国内から消えることに日本は鈍感だと手厳しい。しかも、大手企業は海外移転で得た利益を日本国内に還流しない。
海外への移転を止めるためには、法人税の低減や、エネルギーコストの補助などが必要だと提言している。ただ、この法人税の低減は国内では大企業に対する優遇としてとかくの批判がある。とにかく経常収支が年々悪くなるようでは、よほど腰を据えて対策を考えなければいけない。お手盛りでばらまき予算を行っている場合ではない。