5388.2022年5月22日(日) 戦時下「君死にたまふことなかれ!」

 昨日の朝日朝刊「天声人語」の文脈の中には頷くこともあり、まったく知らないこともあった。日露戦争開戦直後にロシアの文豪トルストイと与謝野晶子が発表した反戦論である。いずれもイケイケ・ムードで軍国主義国家に向かいつつあった当時の国家にとっては、最も恐れている国内からの反戦の声である。トルストイには国内から非難の声が上がったようだが、現在のロシア国内にはこのような国内世論に反論するような勇気ある人がほとんど見られない。与謝野晶子は、弟が旅順に派遣されると聞き、その身を案じて「君死にたまうことなかれ」と呼び掛けた。ところが、それと同時に「すめらみことは、戦いに、おほみづからは出でまさね」と言った。天皇は戦場にはお出ましにならないではないか、と述べたことがすさまじい批判を浴びたという。恐れ多くも当時の明治天皇を批判したことによって、世論は強硬で、晶子は逆賊呼ばわりもされたという。危険思想だとして文壇からも刑罰の声が上がったというから相当刺激的だったのだろう。政府が挙国一致をあおり世論も過熱している時には、普通とてもその空気に逆らいきれるものではない。その意味では、トルストイも与謝野晶子も突き詰めた平和主義者である。因みにトルストイが英字紙に寄せた反戦論とは、「戦争が始まった。海で陸で野獣のように殺し合う。安全な場所にいる者が他人をそそのかして戦わせる」ということである。今のウクライナ戦争に例えれば、「安全な場所にいる者」こそ、まぎれもなくプーチン大統領である。

 さて、今日韓国からアメリカのバイデン大統領が横田米軍基地に到着した。明日23日大統領は午前中皇居で天皇陛下とお会いになって、午後岸田首相と日米首脳会談を行う。中国の東アジアにおける脅威が高まっている中で、対中国、対北朝鮮政策を韓国の尹大統領と話し合って、バイデン大統領から日米韓3国が力を合わせなければならない時に、日韓両国の関係が友好的でないことに憂慮を示され、日本とも話し合うよう要望されたようだ。バイデン大統領は岸田首相との会談でも、韓国と緊密な連携を保てるよう緊密な日韓関係を構築するよう要請がある筈である。そのうえで、24日にオーストラリアとインドの首脳を交えて、4カ国(クアッド)首脳会議を開催する予定である。

 23日夕べに目黒の八芳園の老舗料亭で、首相夫人が抹茶を振舞うなど歓迎の夕食会を行う。

 ところが、選りによって昨日オーストラリアで行われた総選挙の投開票が行われた結果、モリソン首相が率いる与党連合が、アルバニージ党首が率いる労働党に敗れ、9年ぶりに政権交代することになった。モリソン首相は4カ国(クアッド)首脳会議には出席すると言っていたが、次期首相がクアッドに出席するようだ。労働党は、外交、安全保障ではモリソン政権の政策を継続し、モリソン政権の対中強硬姿勢には同調するようだ。極端な政策転換はなさそうなので、岸田首相もホッとしていることだろう。

2022年5月22日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com