今更という気がするが、何と政治家というのは金に汚く、さもしくそれをごまかそうとするのだろうか。猪瀬直樹・前東京都知事が選挙資金を受け取っていながら個人的な借り入れだと批判を突っぱねていて、公職選挙法に問われ、知事辞職、逮捕、起訴が現実味を帯びてくるや、慌てて知事を辞任したのは、つい2カ月前のことである。その後猪瀬氏は前言を翻して選挙資金として受け取ったと白状した。政治資金として届け出をしていないため、虚偽記載として政治資金規正法違反、公職選挙法違反虚偽記載として略式起訴されることになった。
それが今度は渡辺喜美「みんなの党」代表である。化粧品会社会長から2回に分けて8億円の融資を受けて、そのうち今も5億円強が返済されていない。普通の常識や感覚ではとても理解できない精神構造を持つ政治家は、それを利用しようとする人たちにとっては反って好都合なのかも知れない。個人的に借りたと言っていながら資産報告書に記載されておらず、その点が公になると事務的なミスと言い逃れ、資産報告書を訂正すると応えた。どうも現金の貸借契約にしては、返済期日も、利息も決めず、2度目の時は借用証書も渡されなかったというから、とても普通の市民感覚ではない。ヤクザの世界の貸借関係よりよほど酷いようだ。
いくら追求されても白を切り続け、逃げきろうとする。こういう人たちが日本の政治を司っているのだからまったくもって信じがたいし、政治の将来に期待を持てなくなるわけである。
さて、今日静岡地裁は「袴田事件」で死刑が確定していた袴田巌死刑囚を第2次再審請求審で再審開始を決定した。同時に裁判所は刑の執行停止も決め、袴田は身柄を釈放された。犯行時着用の服が警察によりねつ造されたという点が大きなポイントになった。放火殺人事件が起きたのは48年前の1966年で、袴田は事件の2ヶ月後に逮捕され、以来長い年月の拘留に心身障害を来している模様である。裁判の行方もさることながら、半世紀近い拘留の死刑囚に与える精神的プレッシャーで拘禁反応が表れたことをクローズアップして伝えている。実際いつ処刑されるかと気にしながら生き続けるのは、健康に相当なダメージを与えるだろう。
実は、大学生になったころしばしば当時の後楽園ジムへボクシングを観に行った。その当時はボクシングはタイトル戦でなくてもテレビでもよく生中継放送していた。袴田選手の試合をテレビで何度か観て、打たれるのも構わず突進して打ち続けていた随分タフなボクサーだったという印象が強く残っている。あのひたむきに前進するボクサー袴田がその後殺人犯として逮捕されたと知った時、そして死刑を宣告されながら無罪であると再審請求をしていたのが袴田選手と聞いて驚いたことを思い出す。
袴田を救ったのは、彼を信じる大勢の支持者の後押しもあるが、何といっても弟思いの姉のわが身を顧みず支援を続けたことが最も大きかったと思う。この姉の支えがなければ、今日の再審決定はなかっただろう。