政府は今日「原発ゼロ」方針を転換することを閣議決定した。2012年に民主党野田政権が「30年代の原発稼働ゼロ」を盛り込んだエネルギー・環境戦略を発表したが、引き継いだ安倍政権は「ベースロード電源」という意味不明の言葉を使いながら、原発依存度は低減しつつも原子力規制委員会の安全審査に合格した原発の再稼働を進めると隠していた本音を語った。どうも自民党議員らの発言を聞いていて「原発ありき」を感じていたので、やはりそうかとの思いがある。
だが、自民党と公明党は12年の総選挙では、民主党と同じように将来的には原発をなくすような公約をして、「原発再稼働」ということは一言も言っていなかったように記憶している。ニュアンス的には、いずれ将来的に原発ゼロを匂わせていたのではなかったか。結局政治家に騙されたように思えてならない。これではまるで詐欺集団と変わらないではないか。
それなら問いたい。まだ福島第1原発の事故も収束しておらず、相変わらず後から後から放射能漏れ事故や、汚染水漏れを引き起こしている現実をどう考えるのか。問題は全然解決していないではないか。よくもそんな都合の好い決断ができるものだと思う。それにもっと大事なことは、使用済み核燃料の処分という難題にははまったく手がつけられていないではないか。それでも原発を再稼働しようと言うのか。核のゴミの再利用を目指すための高速増殖炉「もんじゅ」が着工以来30余年も経つのに、現在停止中で一向に稼働のメドすら立っていない。
少なくとも使用済み核燃料の処分はどうするのか。せめて処分の方針や計画ぐらい国民にはっきり示したうえで、次のステップへ進んでもらいたい。原子力については国民的議論を踏まえて前へ進むと約束したが、どこで国民的な話し合いを行ったのか。
事故はいつか間違いなく起きる。事故が起きないなんて完璧なことはあり得ない。にも拘わらず、現在の事故の収束もできないうちに原発を稼働して、事故の収束どころか厄介なゴミまで大量に排出する。だが、ゴミの処分ができずゴミは貯まる一方だ。それでも原発を稼働させる。一向に排出されたゴミ問題は解決しない。放射能をまき散らす。この国のエネルギー政策というのは一体どうなっているのか。心配でならない。