2526.2014年4月13日(日) 国家権力が介入する最近の中国映画界

 一昨日11日の朝日新聞朝刊の「世界新秩序―米中を追う」は、中国映画界の現状を1面から2面に亘って大きく取り上げていて中々興味深い。管理、規制、検閲の厳しい中国ならではの、およそ言論の自由とはかけ離れた映画製作の実態と、国の映画界への規制に関する記事を掲載していて面白い。

 中国が映画製作に力を注ぎ、中国版ハリウッドを目指して現在青島郊外に大映画街を建設中で、その規模たるや野球場140個分だというから恐れ入る。

 アメリカ映画界にとって最大の海外市場は長らく日本だったが、2012年に中国の興行収入が日本国内のそれを追い抜いた。今後もハリウッド映画は中国国内で更に収入を挙げると期待されているが、問題は中国で上映される映画が国家の検閲を受けることにより、中国共産党がお気に召さなければ輸入も、上映もされないということになる。映画のストーリーもさることながら、監督やスタッフに中国政府がGOサインを出さなければ中国人は観ることができない。中国政府が神経質になっている民族や人権問題、民主的活動、反政府問題などに触れていれば、検閲をパスすることはない。つまり中国としては、非民主的国家らしく、共産党政府が反中国と判断すれば間違いなく検閲は通らない。

 すでにチベット問題を取り扱ったり、ダライ・ラマ14世を支援する動きを見せた俳優らは締め出されている。‘Seven years in Tibet’に主演したブラッド・ピッドや、ダライ・ラマ14世を支援する財団に携わったリチャード・ギア、アメリカ議会でチベット独立を支持したハリソン・フォードらハリウッドの有名俳優らは、親中国派という中国政府のお墨付きを得ることができないでいる。

 残念ながら、今後中国市場を無視して映画製作の将来的発展は考えられないだろうと言われている。それほど中国マーケットは発展の可能性を秘めている。ただ、進歩的な映画関係者が心配しているのは、経済的には中国映画市場は伸びるだろうと見ているが、反面あるアメリカ人プロデューサーが「チベットや中国の人権問題を扱う映画はもうハリウッドから出てこないだろう」と悲観的に述べているように、作品の質の低下が懸念されている。

 映画はひとつの文化の表れであり、国家権力を行使して恣意的に脚本などを検閲し、自分たちの都合の良いように主旨や筋書きを変更させるようなことは、文化自体を貶め破滅させることでもある。

 最近の中国は他の分野でもしばしば人権抑圧的現象が見られるが、いつの間にかそれが国家の地盤沈下、民族の劣化に繋がることになるのではないかと憂慮している。

2014年4月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com