一昨日中国の新疆ウィグル自治区で爆破事件が起こり、死傷者が出た。習近平国家主席が視察に訪れ、帰った直後に事件は起きた。些かメンツをつぶされた中国警察当局は、直ちにウィグル族のテロ行為であると断定した。このところ中国政府に対する少数民族の反政府デモが頻発しているが、本件でも当局は一層厳重に取り締まりを強化するという方針を示し、少数民族の要求を聞き入れようとしない。締め付けを強化する一方である。
昨年10月天安門広場でウィグル族のテロが起き、今年3月にも雲南省昆明駅で爆破事件があったばかりだが、中国政府の少数民族に対する強硬な姿勢は一貫して変わらない。民主主義をまったく歯牙にもかけない中国は、政策決定ばかりでなく政府人事まですべて限られた幹部だけで内々に決めてしまう。それも最近は太子党と称する元共産党幹部の子弟が暗躍してトップから末端まで政府組織を抑えている。政府への批判は一切許さず、言論の自由をまったく認めない。ある意味では、同じような北朝鮮より組織が大きいだけに余計危ない国家である。
相手の意見を聞き入れ、受け入れられないならとことん議論を戦わせれば良さそうなものだが、一刀両断の下に卓見であろうと何だろうと切り捨てる。そして、党や政府と対立する意見なら危険思想として追放、或いは拘束してしまう。人権尊重の民主主義の欠片はまったく見られない。我々が学生時代に多少学んだ共産主義思想というのは、上から下まで資本主義社会には見られないほど平等な社会を作ることだった。どこで道を間違えたのか、いまの中国には清廉潔白なイデオロギーもまったく感じられず、生殺与奪の権限を利己的に振り回している。その結果官僚の間には賄賂が当たり前のように蔓延る。現状の中国社会の在り方では、将来の明るい展望はまったく見えない。
まもなく、天安門事件発生から四半世紀を迎える。当時活動していたインテリ層は追放され、家族まで公安当局によって監視されている。中国はいまでは世界最大の人権蹂躙国家であり、民主主義も言論の自由もあったものではない。
振り返って昨今わが安倍首相にファジーで欺瞞的で怪しげな言動はないだろうか。憲法解釈という姑息な手段を使いながら一気に憲法改正へ突き進もうとする考えが、集団自衛権の行使に対する姿勢にありありと見える。
日本だって行儀の良いことを言っているが、目指す方向ややり方は共産中国とあまり変わらないような気がする。怖い世の中になってきたものである。