寡聞にして知らなかったが、終戦後連合国軍総司令部(GHQ)は伊豆諸島を日本から切り離すことを考えた。そのため大島では島民が独立を決意して自分たち独自の憲法作成を考えたという事実がある。その時考えられた伊豆大島暫定憲法は全23条で構成されていた。その後GHQは伊豆諸島を日本から切り離すことを取りやめた。
しかし、その大島暫定憲法前文には、「旺盛なる道義の心に徹し万邦和平の一端を負荷しここに島民相互厳かに誓う」と見事に平和主義を謳い、第1条では「大島の統治権は島民にあり」と主権在民を明記した。同じように三宅島や八丈島でも独立構想があったが、このような憲法案を作成するまでには至らなかった。
戦後沖縄や小笠原諸島が一時米軍に占領されていたが、もし当時のソ連が北海道を占領したら今の北方4島の占領状態を考えると北海道はロシア領になっていたのではないか。
それにしても大島島民の強い独立心と主権在民意識には感銘さえ受ける。今取りかかっているノン・フィクションでミクロネシア連邦を舞台にしているせいで、同国独立時の状況にも触れ憲法の前文も紹介している。この憲法には極めてユニークな前文がある。「この島々に住むようになったわれら先祖は、先住者を押しのけてここに住んだのではない。この地以外に移ろうとは望むものではない。・・・・・ミクロネシアの歴史は、人々が筏やカヌーで海を探索した時からはじまった。ミクロネシアの国は星をたよりに航海した時に生まれた。われらの世界はそれ自体1つの島であった」と海洋民族ならではの心構えと理念を述べている。世界にはこういう憲法もあるのだ。
われわれは、通常現行憲法と戦前の帝国憲法ぐらいしか目にしない。それらがいかに気まじめな文で、きちんとし過ぎるくらい完璧な条文となっているかを思うと、大島憲法やミクロネシア憲法はそれぞれ異なった意味で自己主張と特徴が見られる。
ただ、大島憲法の原文は上手の手から水が漏れたか、現在行方不明になっているという。こんな貴重なものがそんな雑駁な取り扱いで良いのだろうか。これだけ固い信念に貫かれた島民が短期間に総意を絞って作ったほどの「作品」に対して、後世の島民には手抜かりがあったようだ。島の教育長はこの貴重な資料の紛失を「貴重な史料を捨てたとは考えられず、どこかに必ずある」などとのんきなことを言っているが、真剣に探してほしいものである。
それにしても小さな島である大島に独立秘話があったことと、このような珍しい資料があったことに驚いている。
さて、今日が連休最終日であるが、山の遭難事故が多発した。昨日も北アの涸沢岳、富士山で死者が出たが、今日は奥穂高岳、秩父雲取山、出雲大山などで遭難があった。例年にないほど雪が多いことが原因のひとつだが、軽率な登山者も増えているようだ。