昨年12月ユネスコが「和食」を無形文化遺産に登録することを決めた。「食」分野ではフランス、地中海、メキシコ、トルコ料理に次いで5件目で、メデタイことだと思う。このおかげで世界中から和食に対する関心が一層高まることになれば大いに結構なことであるし、和食関係者にとって苦労が報われて喜ばしいることだと思う。
ただ、これによって妙な「和食にとって合うことと合わないこと」を決めて、それに適合しない物事を一方的に排除しようとすることだ。早くも現実に恐れていたことが起きている。しかも、教育の現場で幼い学童にとっってゆるがせにできない学校給食の場で、大事な栄養、カロリーを無視するが如き対応を考えていることである。
具体的には、3月から学校給食で牛乳を提供することを試験的に止めたのである。新潟県のコメどころ、三条市教委の主たる言い分は、米を主食とする和食に牛乳は合わないということのようだが、米の産地で米食を伸ばすためにパンに付随している牛乳を止めさせようというなら、考え違いも甚だしい。現実に牛乳の栄養価に匹敵する食材が他にあるだろうか。
私自身は父親が乳業会社に勤めていたことから、子どもの時から毎日牛乳を飲んでいた。父から牛乳はカルシウム分を多く含んでいるので、骨を強化し、身体全体を頑健にすると言われて習慣的に牛乳を飲んできた。そのおかげだと思うが、小学校の時から大学生になるまで学校を休んだことはないし、骨折したこともない。他にも牛乳を飲み続けている兄弟、友人は皆健康体である。学校給食担当者も給食で牛乳を提供することを止めることにより、その代替として何を提供すべきか、悩むことだろうし、牛乳に見合った栄養分を含んだ適当な食材がそう簡単に見つかるとは思えない。三条市の試みは時限的な実験のようだが、結論が出るまでにはかなり時間がかかるだろう。そのうえで問題がなければそれを続けるのだろう。だが、牛乳に見合う代替食材があるだろうか。愚かなことを考えるものである。
流石に専門家も呆れたのか、今月の月刊誌「選択」(2014年5月号)に柴田博医学博士が「和食から牛乳を排除する愚」と題したレポートを寄稿している。