5180.2021年7月18日(日) 横綱白鵬45回目の優勝とレバノンの現状

 大相撲名古屋場所が今日千秋楽を迎えた。2場所連続優勝の大関照ノ富士が3連覇を飾り、そのまま横綱に昇格するか場所前から期待されていた。6場所ぶりに、しかも相撲協会から休場続きで進退の決断を迫られていた横綱白鵬がこれをどう迎え撃つか、興味深い場所だった。しかし、期待に違わず、千秋楽を迎えて白鵬と照ノ富士の全勝対決となった。千秋楽の全勝対決は、実に9年ぶり6度目のことである。勢いの良かった照ノ富士も44回の最多優勝を誇る横綱に熱戦の末敗れ準優勝となった。

 実は、白鵬はこれまでしばしば眉を潜めさせるような言動をして不謹慎と非難されたことがあったが、昨日も時間いっぱいになってから土俵際まで下がって仕切り、協会理事長から横綱らしくないと苦言を呈せられていた。実力はどの力士よりも秀でているが、横綱らしいパフォーマンスではないと身勝手な行動を批判された。今日の照ノ富士に対しても張り手と肘打ちを何度もやっていた。強い横綱として右ひざの手術を済ませて6場所ぶりに出場しながらも他を圧倒して優勝を掴み取っていく。その強い横綱らしい実力には頭が下がるが、もう少し横綱らしい品位を具えてくれれば、不世出の横綱と呼びたいところだ。すべてに満点とは中々行かないものだ。それでも最多優勝45回目を成し遂げた横綱白鵬にはおめでとうと言ってあげたい。来場所は準優勝の照ノ富士も横綱に昇格するようだ。東西横綱が揃い踏みして今後大相撲界が一層発展することを期待したい。

 さて、中東のレバノンがこれほど追い詰められているとは、想像していなかった。経済状況が悪化の一途を辿り、昨年3月には国の借金が返済出来ず、デフォルトに陥っていた。そこには経済以前に政治的不安定が大きく作用している。1967年末同国を訪れた時は、第3次中東戦争の敗戦国の支援国でありながら、戦後の市街からは明るい空気が感じられ街は賑わい港には海水浴が大勢集まっていた。拙著「八十冒険爺の言いたい放題」に紹介した高校生カィールくんに巡り合ったのも、このレバノンの首都ベイルートだった。

 そのレバノンは地中海に面した立地上の優位性から多くの国々と経済・外交関係を結んで繁栄し、市内には多くの外国人の姿が見られ、ベイルートは別名アラブのパリとも呼ばれていたほどである。アラブの国々は、それぞれに難しい立ち位置にあったが、レバノンでは、宗教や宗派によって国会の議席や閣僚ポストを分け合う、特異な「宗派主義」という政治体制を保ちながら微妙な国家の舵取りをしている。

 私自身早くから興味を惹かれたのが、政治に宗教が色濃く反映され、大統領をキリスト教マロン派、国会議長をイスラム派シーア派、首相をイスラム派スンニ派から選ぶ3つの宗派と信者に配慮した政治運営のルールである。このベイルートに昨年8月大爆発が起き、当時の内閣が総辞職に追い込まれた。爾来首相不在のまま1年近くに亘り政治空白が続いていた。

 レバノンは国として債務不履行に陥り国民の多くが月額数十㌦程度の生活を余儀なくされている。かつて宗主国だったフランスが、国際通貨基金(IMF)の支援を受ける条件として、宗派主義からの脱却を要求している。このように難しい立場の国家に果たして諸外国が、救いの手を差し伸べてくれるだろうか。

 訪問してから55年も経った今でも懐かしく思い出すベイルート市内の洒落たストリートと明るい人々が生活し、アラブでも他の周辺国の中でも一頭抜きん出ていたレバノンの厳しい現状を知るにつけ、政治家の責任は重いものだと考えている。首相に指名されていながらハリリ元首相は、アウン大統領が考えていた自派が3分の1を超える閣僚名簿に承服出来なかった。これによりハリリ元首相は組閣を断念せざるを得なかった。結局宗派主義が、かつては豊だったこの浮遊する国・レバノンを今益々苦境と混迷に追い込んでいると言えそうだ。

2021年7月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com