5138.2021年6月6日(日) 世界中で見られる人種差別の形跡

 地球上で差別やジェノサイドのないところはほとんどないと言っても好い。特に異なる民族が共存している多民族国家では、古来人種差別があった。それはインディアンと呼ばれるアメリカの先住民族、イヌイットと呼ばれるカナダ先住民の例を持ち出すまでもない。つい数日前にネットで伝えられていたが、今朝の朝日新聞にそのカナダの実態が紹介された。実は、カナダで最近昔の先住民寄宿学校の敷地内から、215人分の遺骨が発見されて今カナダ全土に波紋が広がっている。

 先日NHK・BSで1960年代にユル・ブリンナー、スティーブ・マックィーンが出演した映画「荒野の七人」が放映され、懐かしく観たが、その映画ではメキシコ人部落でメキシコ人の遺体を街のはずれの墓地に埋葬するのを街のボスたちは拒否していた。しかし、ブリンナー扮するクリスが手を貸したお蔭で埋葬することが出来たシーンがあった。つまり墓場に入ってまでも異民族とは一緒にいたくないという気持ちが、西部開拓史時代でも人びとにはあったのである。

 中国でも昨今チベット族や、新疆ウィグル族に対する人種差別が世界中から注視、非難されている。日本ではそれほど大きな話題にはならないが、それでも昔からアイヌの存在、文化はしばしば奇異の目を以て取り上げられてきた。他にも各地に少なからず部落民問題があり、それを象徴的に取り上げ、描いたのが島崎藤村の「破戒」だった。中学生になって初めて「破戒」を読んだ時、最初のうちは差別語「穢多(エタ)」の意味がぴんと来なかった。漸く主人公・瀬川丑松が被差別部落の出身だと分り、差別が現実にあったことを知った。まだ中学生だったが、人間間に差別があることを知り、それなりにショックだった。

 カナダでは先住民に対する同化政策が建国前からあったという。先住民寄宿学校は実に全国に139校も設けられ、15万人以上の児童が親元から強制的に引き離されて生活していた。今回遺骨が発見されたのは、カムループスにある最大の寄宿学校で、カトリック教会が運営していたものである。カトリックが、このような人種隔離政策に手を貸していたことも驚きであるが、ことほど左様に同化政策がカナダでも当たり前となっていたのである。

 この遺骨発見について、国連の特別報告者はカナダ政府とカトリック教会に対して、徹底的に調査することを求めた。トルドー・カナダ首相はカナダ自身の責任であることを認めているが、カトリック教会は抵抗しているという。宗教とは一体何のために存在するのだろうかとカトリックの対応に疑問を感じている。

 さて、今日ショッキングな訃報を受け取った。元朝日経済部記者だった阿部和義さんが冥界へ旅立たれた。彼は日比谷高校の出身だが、共通の友人もいて高校時代にともにラグビーをプレイしていたこともあり、妙に気が合った。年齢は78歳で私より4年若かったが、彼はプライベートでいろいろな面でご苦労された。信州大学医学部学生だったご子息を、こともあろうにオウム真理教による松本サリン事件で喪い、その後本人も舌癌に罹り、2度の手術を済ませて前向きに活動しておられたところだった。7年前に上梓した「南太平洋の剛腕投手」出版を大変喜んでくれ、ご馳走に与り、そのうえ業界紙に書評まで書いてくれた。

 4月には大学の親しかった登山仲間が唐突に他界し、今またサラリーマン退職後の親しい友人をお見送りすることになってしまった。今は亡き阿部和義さんのご冥福を心よりお祈りするばかりである。

2021年6月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com