5136.2021年6月4日(金) 安易な高齢者医療費・倍額値上げ

 今日参議院で高齢者医療費を自己負担1割から2割へ引き上げる改正法案が可決された。値上げはかねてから現役世代の負担軽減が狙いと言ってはいたが、それにしても安易に高齢者へ過重な負担を負わせることに疑問を抱いていた。他に財源がないのか充分検討した様子も見られない。少しは心苦しいと感じたのか、来年以降に実施される改正法案適用に際して、向う3年間は1か月内の診療費が3千円以内で済むよう工夫するという。

 そもそも高齢者の医療費補助は、国の福祉政策構想の重要な一環として取り入れられ、整備されたものである。その福祉政策を単に社会保障関係費が不足するからとの理由で、その途中でないがしろにするが如きは今後の社会福祉政策へ暗い影を投げかけるものである。増え続ける高齢者の医療費の約4割を若い世代が補っているという表現もおかしいと思う。社会保障費の範疇内で考えれば、そう考えられないこともない。しかし、これは全国民的に考えたうえで決定した政策であり、それなら全財政支出の中で総合的に考えられるべきことではないかと思う。私自身高齢者負担1割の恩恵を受けている立場上、正論を述べることに憚られることもある。だが、社会福祉政策で不足する財源を他の無駄な支出の中に見出すことは出来ないだろうか。いくらでも可能性はあると思う。

 例えば、過日問題になった防衛省が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代わりに、イージス艦2隻を導入する計画では総費用が約1.5倍の約7千億円に膨らむ。更に部品転用などに数千億円が必要とされるという。これらの購入については国会でまったく議論されることもなく、防衛省がアメリカとの話し合いの中で話し合われたものである。支出に厳しい一方で、アメリカから購入する防衛機材については泥縄式に決めるようであまりにも甘い。もう少し社会福祉政策への温かい視点と対応策が必要ではないか。不信感が募って我慢し難い。

 法案には自民、公明両党の他に日本維新の会と国民民主党が賛成したようだが、日ごろ高齢者に配慮していると広言していた公明党や国民民主党の裏切りにはがっかりさせられる。

 さて、イスラエルの独裁者と見られていたネタニヤフ首相が退陣することになった。パレスチナとの対立と複雑な国内事情の中で、歴代最長の約15年間に亘って政権を維持してきたネタニヤフ首相であるが、案外政権の基盤は脆弱だった。3月に行われた総選挙でも与党「リクード」は過半数を獲得できなかった。これから複雑な国内事情を抱えて対立するパレスチナ自治政府とどう向き合って国家を支えて行くのか。極右派からアラブ系政党まで参加するかつて前例がない連立政権で堅実な政治が行えるのか疑問である。下手をすると政権内部で対立が表面化して争いが絶えない政権運営となる懸念がある。取り敢えず、ネタニヤフ首相以上に極右的な極右政党「ヤミナ」党首ベネット氏が首相に就任する見込みであるが、2年後には、連立交渉を続けていた中道野党「イェシュ」党首のラピド氏が後継首相となる予定だとも伝えられている。パレスチナと融和、或いは対抗するために、イスラエル政界が盤石な基盤にあるとは思えない。これから中東地区でイスラエルがどれほどの存在感を示すことが出来るだろうか。その最大の脅威である敵対国のイランでも、今月18日に大統領選が行われるが、ここも新大統領選出に多難が予想される。相変わらず中東から目が離せない。

2021年6月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com