5074.2021年4月3日(土) ミヤンマー進出日本企業の難しい立場

 今ちょっと気になっていることがある。ミヤンマーの国軍と日本企業との意外な関係である。軍が起こしたクーデターにより、今ミヤンマー国軍は世界中から非難され、反軍抗議デモで国内は混乱の最中にある。日ごろ温厚なミヤンマー人からすれば、昨日までに543人の犠牲者が出たこと自体穏やかならぬ状況にあると思う。

 スーチー国家顧問率いる民主派の国民民主連盟(NLD)が、2015年及び2020年の総選挙で国軍系連邦団結発展党(USDP)に対して連続して80%以上の得票で圧勝し、軍にこのままでは永遠に野党に甘んじることを覚悟しなければならないことを知らしめた。軍の神頼みは軍政下に施行された憲法であり、それは国会議員議席数の4分の1を国軍推薦議員が占めることに加えて、憲法改正には国会議員4分の3以上の賛成が必要であるという厳しい条項である。これでは現実的に憲法改正はほぼ不可能である。そこへ憲法改正ではなく憲法を無視して新憲法制定の声が出てきた。選挙で連勝続きのNLDにとっては、憲法改正の隙を窺っている間に広がった希望的噂である。NLDも憲法改正の考えを捨てたわけではないが、軍はこれを警戒し、政治体制を力で奪取しようと試みたのが、この度のクーデターだった。

 ミヤンマー国軍が他国の軍と大きく異なるのは、軍が金融業から製造業に亘って関連企業を広く抱えていることであり、民政移管後でも経済発展を遂げたことが軍の懐を豊かにする大きな要因ともなった。当然それらのミヤンマー企業は、日本企業との結びつきも強く、結果的にミヤンマー軍と日本企業とのつながりも堅い。

 実は欧米諸国から見ると日本企業とミヤンマー軍との経済的つながりが、クーデター後の日本政府の国軍に対する声明を弱めていると批判的に受け取られている。ミヤンマーを残された最後のフロンティアと称して近年続々と進出した日本企業にとっては、良かれと思っていた軍の関連企業だったことが思いがけず足を引っ張る形になった。軍はヤンゴン市内の一等地において都市開発まで計画しているが、開発予定地も軍が所有しているというから進出する日本企業としては抜き差しならぬ緊密な関係に陥ることになる。

 日本のメガバンク、三井住友、みずほをはじめ、商社の丸紅やJCB、キリンビール、フジタ、ホテルオークラ、東京建物など一流企業と軍企業との関係はとりわけ緊密である。この間の事情を知っている親日的だったミヤンマー人からは、大分嘆きの声が挙がっているという。旧ビルマ時代に度々ミヤンマーを訪れたが、彼らの親日ぶりは想像を超えるものだった。戦時中も日本軍がビルマの人びとに大きな被害を与えなかったこともあるが、日本軍兵士が現地人と普段から溶け込んだ関係を築いていたことが大きかったと思う。ビルマでは嫌な思い出はまったくないし、今や少なくなってしまったが、ビルマの人びととは今も文通で交流を続けている。

 昨日在日ミヤンマー人が、外務省へデモ行進してミヤンマー国軍に対して日本政府が厳しい制裁を課すよう求めた。今後政府が国軍に強い態度で対応することと、ミヤンマーへ進出している日本企業が、軍の関連企業と手を切ることによって国際社会の信頼を取り戻すことを期待したいと思う。

2021年4月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com