5070.2021年3月30日(火) 思い出の詰まったスエズ運河再開

 大型コンテナ船が座礁したまま航行不能に陥っていたスエズ運河が、昨日漸く船が離礁して運河が再開され、周辺に足止めされていた大型船422隻も動き出しているという。このところスエズ運河の画像を観る機会が増えたので、興味深く思っていた。近著「八十冒険爺の言いたい放題」にカイロからスエズへ向かった旅について1章を書いている。スエズでは警察仮留置所に閉じこめられ、部屋から脱出して徒歩でスエズ運河を訪れ、束の間とは言え世界の大運河をこの目で見たことが懐かしい。

 私がスエズを訪れたのは54年前の1967年第3次中東戦争直後だったが、運河を見渡せるような場所ではなく、戦禍に遭ったスエズ市内の運河の入口だったので、今回の事故現場とは数十㎞離れている。それでも運河なんて普通では滅多に目にすることはない。当時を思い起こして感慨無量の思いがした。

 これから話し合わなければならないのは、補償問題らしい。コロナ禍で観光客がめっきり減りエジプトにとり最大の収入源の観光収入と並んで、国家財政を支えていた運河通航料収入の減額は極めて大きな打撃である。1隻の通航料が船のサイズにもよるが、3~5千万円と言われており、スエズ運河庁にとっては1日平均50隻が通航を遮断されたことにより約15億円の損失であると言われている。第一義的には、船の所有者である日本の船会社が保険を使って対応する可能性が高いようだが、円満解決までにはかなり時間がかかるだろう。それでも取り敢えずスエズ運河が再開されたことは、吉報であり、素直に喜びたいと思う。こう言っては顰蹙を買いかねないが、半世紀ぶりに思い込みの強いスエズ運河のニュースに触れて懐かしく思った。

 さて、昨日待望していたチャールズ・チャップリンの名画「ライムライト」をNHK・BSで録画しておいたビデオて観ることができた。1952年に製作されたチャップリン晩年の作品であるが、世界中で大ヒットして話題となった作品である。数々のチャップリン映画の中で最もその特徴を具現していると見られているこの映画には、全体に心地好いテーマソング♪テリーのテーマ♪が流れているが、同時に時代的に第1次世界大戦が勃発した1914年のロンドン市内の光景が観られて興味深かった。ストーリーとしては、道化役者チャップリンが、足を痛めて絶望的になっていたバレリーナを救い、更生させ、大劇場でプリマドンナとして復活させるまでのストーリーである。バレリーナ、テレーサが舞台で踊っている間に、彼女の恩人となった道化役者カルベロが舞台裏で亡くなって終わる愛情物語である。チャップリンの映画は、ほとんど彼自身が監督、脚本、音楽、主役を演じているが、他の「モダン・タイムス」「チャップリンの殺人狂時代」「チャップリンの独裁者」などに比べて、ハリウッドで製作した最後の作品となったこの作品こそが一番チャップリンらしい作品だと思う。

 世界大戦勃発という未曽有の暗い時代に、深刻な戦争の非情さを見せずに、市民生活の一部を涙と愛情にユーモアも交えてスクリーンに表現する演出者としてのチャップリンの類稀なる才能は余人をもって代えがたいと思う。印象的な良い映画だと思う。

2021年3月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com