2609.2014年7月5日(土) 骨抜きにされる原子力規制委員会

 先日政府は原子力規制委員会の委員長以下一部の委員を交代させることを発表した。田中俊一委員長以下僅か5人の組織である。その中で田中委員長と島崎邦彦委員長代理を交代させるという。同委員会委員は環境省の外局で、各委員はそれぞれに人格、識見、実績ともに優れた人物で衆参両院の同意を得て首相が任命する権威ある職責である。

 なぜこの時期に重要な原子力規制委員会の人事をいじるのか? 答は明白である。田中氏と島崎氏はともに原発再稼働について慎重派だからである。特に島崎氏は地震学が専門で断層調査や地震対策の審査を通して、早期の再稼働を求める電力会社と激しくやりあってきた。関西電力大飯原発3、4号機の審査では断層の深さなどを見直すよう強く求めた。こうした慎重な意見が再稼働を推進しようとするグループから快く思われていなかった。

 その一方で、後釜に座る委員の一人である田中知東大教授は、原発慎重派ではなく原発推進派である。日本原子力学会元会長であり、これまでにも原発推進の日本原子力産業協会理事の立場にあった。これで、原発がどんなに安全であるとの理由をつけるにせよ、再稼働へスィッチが切り替わったことがはっきりした。更にばつの悪いことに、今朝の朝日一面トップに中立ポストに就く田中知氏が、推進派の原子力事業者や団体から巨額の報酬を受け取っていたことが暴露された。しかもこれについて説明を求められた田中氏は、その立場にないと質問をはぐらかせて答えるべきことに答えていない。こういう不誠実な原子力規制委員が、原発再稼働かどうかを決めるのだから、我々は安心して眠ることができない。

 この原子力規制委員会の人事を見ているだけで、中立であるべき諸々の組織への安倍政権の介入、つまり中立性が求められるポストに次々と息のかかった人物を据える強引なやり方は目に余る。日銀総裁、NHK経営委員、内閣法制局長官などの人事についてもこれほど露骨な介入をした政権はいままでにない。

 いかに総選挙で大勝したとは言え、これほど好き勝手な人事をやられてはそこに働く人々のやる気を失わせるばかりでなく、まともに職務が行われず事業が停滞し、実力よりごますりや賄賂が蔓延るのではないかと心配である。これも安倍首相自身にさほど優れた能力がなく、コネや血筋で現在の地位まで駆け上ってきたトレースのせいだろう。

 公私混同が一体となった現在の安倍政権のやり方が、日本の全般にやる気を失わせるようなことがなければ良いがと願う。

2014年7月5日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com