2621.2014年7月17日(木) 原発再稼働の論理

 予想通り今朝の新聞は川内原発1、2号機が新検査基準に合格したことを大きく取り上げている。菅義偉官房長官が「原発が稼働していないことによって、4兆円近い国富が毎年海外に流れている。国内で企業が安心して活動するには安定したエネルギーが必要だ」と原発亡者のように語ったが、その前に関西電力大飯運転差し止めを命じた福井地裁判決は、原発停止は貿易赤字を増やし、国富流出につながるという指摘に対して「豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富である」と言い放った。不遜な官房長官の「人命より原発が必要」の本音に対して、見事に面一本を浴びせている。他にも、財界の2人の無責任男のコメントを紹介する。

 まず、日本商工会議所三村明夫会頭は「待ちに待った。1つの大きなステップが前に進んだ。高く評価する」と福島原発の被災者の心情を斟酌することもなく手放しの喜びようである。もうひとりは経済同友会長谷川閑史代表幹事の「再稼働はようやく成長軌道に乗りつつある日本経済の持続的成長に不可欠だ」という、金儲けだけを考え人間への思いやりはまったく配慮しない発言である。こういう金の亡者にとっては、人命は二の次なのだ。彼らの周辺では、早くから原発再稼働ありきの空気が作られてきた。

 これら原発稼働派に対して批判的な朝日の関連見出しを片っ端から挙げてみよう。「政権 再稼働加速へ」「川内原発 新基準に初の『適合』」「責任あいまいなまま」「避難計画 審査の対象外」「教訓置き去り」「規制委、見切り合格―川内原発再稼働へ」「『安全とは言わぬ』審査に限界」「政権、反省より成長戦略」「審査1年再稼働へ先例」「地震・津波想定厳しくしたけれど 巨大噴火見極めに疑問」「『メルトダウン』どう防ぐ? 電源・冷却確保義務づけ」「事故対策手薄なまま」「福島の痛み 忘れたか」「被災者 怒りと諦め」「再稼働 消せぬ不安」「揺れる地元『複雑です』」「基準に合うか否かだけ。納得しない」。

 そして社説では6段に亘って「原発再稼働を問う『無謀な回帰に反対する』」として、原発再稼働に対して徹底的に反論を展開している。

 菅官房長官にしても、財界のお偉方にしても、自分たちは放射線の危険の外に生活しながら、日本経済の減速を心配するような発言を繰り返しているが、その実自分の存在感の向上と自身の利益のためだけに発言しているのではないか。被災者の立場に立って発言することをせず、必ずや起きるであろう第2の福島の危険を防護できないからこそ、努力しないで楽な生活を送る算段ばかり考えた発言を繰り返しているだけではないのか。

 突き詰めれば、経済至上主義と利己主義が原発再稼働を擁護する発言をさせているだけではないか。

 今夕の朝日「素粒子」はこう言っている。「規制委は安全とは言わず。国は審査に通れば動かす。電力と自治体は国に従う。かくて責任の2文字は宙に浮き」。

2014年7月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com