4941.2020年11月21日(土) 過去最多のコロナ感染者と旅行会社への打撃

 今日も新型コロナウィルス感染者の勢いは一向に衰えない。東京では3日連続で500人を超え539人、大阪でも初めて400人を超え3日連続で過去最多の415人となったのをはじめ、7府県で過去最多となった。全国では2,596人で4日連続で過去最多となった。今やコロナ第3波の真っ只中にいる感じである。

 今日から3連休である。政府がしきりに我慢の3連休と言い、あまり外出しないことを国民に訴えている。一昨日新型コロナウィルス感染症対策分科会・尾身茂会長は、西村経済再生相が「GO TO TRAVEL」の運用見直しを求めるとの提言に対して、早急に対応を検討したいとの発言を受けて中止してもらいたいような発言をした。しかし、それでは物足りないと思ったのか、昨晩尾崎治夫・東京都医師会長がはっきりと中止をアピールしていた。今日になって菅首相は、「GO TO TRAVEL」の新規予約は一時停止すると公表した。

 第3波の猛威は収まりそうもない。経済活動の面でも大きな影響がはっきりした。すでに航空会社や鉄道会社が、経営上大きなダメージを受けていることが公表されていた。ここへ来て観光業を担う旅行会社の厳しい実情が公表された。旅行業界の主役たるJTBは、昨日経営改革をしてもこの先直ちに効果が表れず、旅行需要の回復には時間がかかるとみて、大胆な経費削減策を実施し会社のスリム化で生き残りを図ると発表した。

 「GO TO TRAVEL」が一時しのぎの利益をもたらしたが、JTBは先行きを考え人員削減に踏み切ることにした。来年度までに昨年度に比べてグループの要員を約6,500人、全体の6割減らす。また、国内店舗を来年度までに115店舗、海外の事業所を190以上削減し、従業員の賃金もボーナスの減額などを合わせて年収で平均3割減額というから従業員にとっては深刻である。

 厳しいかったのは、国内旅行以上に海外旅行部門である。昨年度上期旅行業売上高では、国内旅行は2,656億円だったが今年度は399億円の▲85%で、海外旅行は昨年度2,384億円に対して今年度は219億円で▲90.8%という散々たる結果だった。この実績では、大ナタを振らざるを得ないのも無理ないところだと思う。社員の削減に加え、役員報酬やボーナスの削減による人件費の削減と店舗などの一連の構造改革により、21年度には営業損益の黒字化を目指すという。しかし、それが可能かどうか、前途は中々厳しいと言わざるを得ない。

 同じように今や大手と呼ばれるようになったエイチ・アイ・エス(HIS)も今年度10月期純損益が318億円の赤字予想である。来年夏を目途に国内にある260店舗の内1/3を閉店するという。かつてJTBの対抗馬とも見られていた近畿日本ツーリストは、7千人の従業員を25年3月末までに約2/3にまで減らす。

 問題の深刻さは自己資本比率に見られる。JTBの自己資本比率は、3月末時点で24.3%だったものが9月末には11.4%にまで下がったことである。銀行などからの借入金で今年9月末の手元の現預金は、前年同時期と同じで当面の資金繰りに問題はないとしている。しかし、近畿日本ツーリストの9月末時点の自己資本比率は債務超過寸前の1.4%にまで追い込まれていることである。

 旅行業は、自分自身がそれが大きく発展する時代に働いていたので、良くも悪くも実態をある程度理解出来る。

 旅行の需要は常に存在する。現在予想もしなかったコロナ禍により、旅行を自粛するようになったが、元来時間的、経済的に少しでも余裕が生まれれば、人は旅へ出たがるものだ。従って流行しているコロナ禍が終息すれば、再び旅行を楽しむ人々が戻って来ることは間違いない。更に、旅行業は製造業などとは支出の構造が大分異なる。人件費の割合が高く、従ってそれを少しでも削減して急場をしのぐことが出来れば、再生の機会はやって来る。「旅は知の源泉」と「旅は未来を拓く」は、拙著をプレゼントする前著と次作品の内表紙に書く贈り言葉である。旅が消えることはない。そのためのお手伝いをする旅行会社が、捲土重来を期して再起を図ることが出来ることを強く望んでいる。

2020年11月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com