2658.2014年8月23日(土) パブリック・コメントに見る政府案への低評価

 特定秘密保護法の施行に向け、政府が実施している運用基準などの素案に対するパブリック・コメント(意見公募)にアメリカの安全保障専門家が、素案は不十分で改訂されるべきだとの意見を述べていたことが分かった。その専門家はキッシンジャー元国務長官の腹心として、西山事件にも発展した沖縄密約にも携わっていたモートン・ハルペリン氏である。

 ハルペリン氏は運用基準の素案について、何を秘密指定してはいけないかという指標がないと手厳しい指摘をしている。また、ジャーナリストが秘密を暴こうとすると刑事罰の対象になりかねないことも危惧している。そして、「人々が情報を得られるように政府役人に説得する努力は刑罰の対象に含まないことを明確にすべきだ」とも主張している。なお、氏は昨年12月、秘密法が成立した時にこれを「21世紀における民主国家で検討されたもので最低レベル」とこき下ろしていたようだが、こうまでアメリカの専門家に厳しく決めつけられて、それでもなお安倍政権は反省の色もなく法案実施を強引に前へ進めようというのだろうか。

 そして戦争介入へ導く集団的自衛権行使容認については、ハルペリン氏のコメントは分からないが、政府は果たしてどう考えているのか。一昨年暮れの総選挙で圧勝した自民党が数の力を笠に着て、ごますり取り巻きに支えられて安倍首相はあくまで持論を貫き通すのか。

 ところで防衛問題に詳しいとされる石破茂・自民党幹事長が、かねてより安倍首相から安全保障法制担当大臣就任を打診されているようだが、石破氏はそう簡単に首相の手には乗ろうとせず返事を保留している。安定した支持率のある首相としては、自民党員の間で人気の高い石破氏が次の選挙で指揮を執るとなると、石破氏の存在が一層怖い。現状では次の自民党総裁選挙で安倍首相にとっては最も手ごわいライバルは石破幹事長である。何とかして権力の集まる幹事長の座を明け渡してもらい、その代わり新しい大臣の座を、防衛大臣と抱き合せで受けてもらって石破氏の力を削ぎたいところである。

 その防衛問題に精通した石破氏が、今日改めて新ポスト就任に難色を示した。首相からの要請をいかに辞退し、総裁決選で雌雄を決するかという点に今後の興味がつながっていく。そして、特定秘密保護法案と集団的自衛権行使容認の成立に貢献したであろう石破幹事長が前記ハルペリン氏の指摘にどう応えるのか、興味の尽きないところである。

2014年8月23日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com