4903.2020年10月14日(水) 計画性のない「GO TO トラベル」

 国土交通省は、新型コロナウィルス感染拡大により深刻な打撃を受けた観光業界を支援するため、観光庁の主導により「GO TOトラベル」キャンペーン(1人当たり1泊2万円、日帰り1万円が支援額上限)を7月から来年1月末までの予定で始めた。観光地で観光客の姿が見られなくなり落ち込んだ旅行需要を喚起するべく、旅行代金を最大50%補助しようというものである。50%の内35%は旅行商品の割引を行い、15%は旅行先の登録加盟店で利用出来る「地域共通クーポン」を発行し、観光地全体の消費を促す主旨である。コロナの影響もやや薄れてきたことと、当初は東京発着の旅行、都内の観光施設、東京都民を対象としない形で始まったが、1兆3千億円もの税金を使うキャンペーンが公平ではないとの声に10月からそれらの例外を取り除き、更に支援の効果が表れる対策を取った。

 確かに最近は閑古鳥が鳴いていた観光地にも観光客が戻って来て、その効果が少しずつ表れてきたと見て良いようだ。

 ところが、このキャンペーンには分かり難い点がいくつもあり、昨日時点では旅行客の内利用した割合が17%内外だった。そこへ国が事業者に対して配分している給付金が事業者によっては少なくなってしまった。急に旅行条件が拡大されたことを受けて申し込みが簡単に出来る予約サイトへ殺到したために、それら予約サイトでは不足してしまったのだ。そのため各予約サイトでは旅行代金の割引額を独自に縮小する動きが広がった。メディアを通じて事業者による一方的な変更には理解出来ないとか、分かりずらいとの声が上がった。慌てた観光庁は官庁らしからぬ考えで追加の給付金を配分し、割引額を元へ戻すよう求めるという。大金を投入した国の事業としては、些か一貫性に欠ける政策となってしまった。

 ネットの投稿には、「国会議員のやつらはロクに現場を見ず、机上の空論で見切り発車する考えが、無駄なことに繋がっているんだょ」と手厳しい意見が載っていた。長らく旅行会社に勤めていた私自身の経験から考えても、観光庁の企画と運営が、やや「総合的で俯瞰的な」計画性に欠け、杜撰だったと思う。投稿者の言うように、政官界に観光業界の実態がよく理解出来ていないからだと思う。

 これについて、赤羽国交相は、予算が足りないという情報を事務局や国交省が把握して適切に対処していれば、今回の問題は防止出来たと他人事のようなことを言っている。更に機動的に予算枠の追加配分を行う仕組みに改めるとして予算が直ちに枯渇することはないと呑気に応えていたが、ちょっと軽々な対応ではないかと思う。計画から実施、その方法などについて拙速に行った結果が表れたのではないだろうか。

 ある経済アナリストは「国の政策による割引額が突然変わることは、普通あってはならない」と言い、「いずれ全体の予算が尽きる時が来る。その時にどう対応するのか、国が事前に方針を示すべきだ」と厳しく指摘している。

2020年10月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com