3290.2016年5月16日(月) トランプ現象に見るアメリカ人の本質と本音

 アメリカ大統領選で共和党の候補者指名がほぼ確実視されているドナルド・トランプ氏の保護主義的なアメリカ第一主義とアメリカの内向き思考が、海外やアメリカ国内のリベラル派に不安を抱かせ、また批判的な声が上がっている。予備選がスタートした時点では、いかに不動産王として成功したとは言え、与しえない人物や国を徹底的に非難罵倒し、人道的にも許されない発言をするに至っては、とても常識ある人間の行動とは思えず、所詮泡沫候補の域を出ないと思われていた。それが、選挙戦が進むに連れ、撤退どころか反って得票を伸ばしライバルを悉く降し、遂には指名候補に最も近い位置に近づいた。

 実は私もいずれトランプ氏は敗北し選挙戦から降りるだろうと考えていた。それは、アメリカ人のホスピタリティや、公平感、良識を信じていたからである。誤解に基づいて他人を誹謗中傷し、イスラム系移民を国外追放とか、難民受け入れ反対のようなアメリカの建国の歴史をも否定するような発言には、海外を含め多くの国民から顰蹙を買うどころか、反感を買っていた。それでもトランプ氏は勝ち続けた。アメリカの良心というものに失望した。もう少し常識と思いやりのあるのがアメリカ国民だとの思い込みは見事に裏切られたような気がした。

 11月の本選で民主党候補者との一騎打ちはどうなるのだろうか。もし、トランプ氏が本選で勝つようなことになりアメリカ大統領に選出されたら、これまで予備選中にトランプ氏から非難されていた外国人はどんな気持ちに捉われるだろう。

 そんな折今朝の日経紙の「池上彰の大岡山通信」に池上氏が、ある程度納得できる寸評を書いていた。「トランプ現象は突飛か」「内向き米国実は昔から」とコメントしている。アメリカは元々「世界の警察官」ではなく、モンロー第5代大統領の南北米大陸以外に関して干渉しない外交方針「モンロー主義」が基調にある。他国の外交に深入りしないのだ。ヨーロッパで火蓋を切った第1次、第2次世界大戦でも、アメリカは関わろうとしなかった。第1次大戦では、アメリカ客船がドイツの潜水艦によって撃沈され激高した国民の声に押されて参戦を決めた。第2次大戦でも日本軍の真珠湾攻撃の不意打ちに怒った世論に押されて報復行動に出たとされている。戦後「世界の警察官」としてアメリカが孤立主義を放棄したのは、ライバル・ソ連が台頭し影響力を強めてきたからで、アメリカの歴史の中ではむしろトランプ流の考えが主流だった。

 池上教授が指摘するように、アメリカ人の考え方やアメリカの本質がそういうことなら、これからは同盟国も考えを改めねばなるまい。当然日本もそうだ。私がアメリカ人の良識ある言動や判断を期待したのは幾分過剰評価で、思い過ごしだったということになるのだろうか。

 さて、ほんの1週間前にフィリピンで次期大統領選挙が行われ、あれよあれよという間にフィリピンのトランプと言われるダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏が圧倒的な勝利を収めた。この人もきつい言葉で事あるごとに、悪いヤツは殺すと口走り、領有権を争う南シナ海問題では水上バイクで行ってフィリピン国旗を立てると過激な発言を繰り返していた。だが、長年市長を務めたダバオ市の治安回復に大きな実績を上げた。それでも一国の大統領になって荒っぽい言葉遣い通り政治を行うわけにはいくまい。それが昨日の記者会見では、対立している中国に対して「戦争を望まない。全ての国と友好的な関係を持ちたい」とやや軟化してきたが、どこまで本音であろうか。仮に本音でないとすると中国と近い将来に戦火を交えることになるのだろうか。どうも物騒な発言をする大物が出現してきたが、時代の空気がそうさせるのだろうか。一般の国民が悩み右往左往しなければ良いがとどうも心穏やかになれない。

2016年5月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com