2677.2014年9月11日(木) 朝日新聞社社長が誤報について謝罪

 ニューヨークの9.11テロが勃発して今日で13年になる。そして東日本大震災から3年半になる。それぞれ思い出す事象が多いが、前者については当時のブッシュ大統領によるアメリカのアフガニスタンへの介入によって今日のっぴきならない状態となり、現在もイラク北部における「イスラム国」の思うがままの混乱状態を引き起こした遠因となっている。

 一方後者については震災の後遺症もさることながら、結果的に誘発した福島第一原発の後始末が重大な課題を与えた。当時の民主党政権は、将来的には原発廃止の方針を出した。だが、自民党政権に代わって、そのニュアンスは変わった。安全性が担保されれば原発再稼働を進めるとのエネルギー政策を打ち出した。しかし、未だに避難住民が仮設住宅に住み、使用済み核廃棄物の最終処理場も見つからず、核アレルギーが充満する中で政府は本音である原発再稼働を積極的に発表できずにいる。

 それが、つい数日前に安倍第2次改造内閣がスタートし、原発を担当する経産大臣に女性閣僚・小淵優子氏が就任するや原発再稼働に前向きの持論を述べた。そして、昨日のことである。大臣発言が原発賛成派にとって追い風になったかの如く、鹿児島の薩摩川内の原発について原子力規制委員会は安全性が担保されたとして、再稼働へGOサインを出したのである。あとは地元住民の考え次第となった。これから川内市の住民投票によって、将来の日本の原子力政策の方向が決められかねないことになる。

 こう言っては失礼だが、川内市内のインタビューを聞いていると、かなり思いつき発言が多く原発の地元でありながら、他人事のような発言をしている住民が多かった。「原発によって仕事をしている人も多いので、なくなるということは彼らに気の毒だ」なんて発言が、簡単に出てくることからあまり原発について知らないのではないかと心配になった。

 さて、今日午後7時半から朝日新聞木村伊量社長が謝罪会見を行った。いかに大手新聞社の社長の記者会見とは言え、これだけ注目を集めたうえで自社の報道が誤報であり、その点について謝罪し、訂正が遅すぎたことに対しても謝ったことは異例である。

 木村社長の謝罪の理由は2つの大報道内容に関する誤報である。そのひとつは、東京電力福島第一原発事故をめぐり、政府の事故調査・検証委員会が実施した吉田昌郎元所長(故人)への聴取記録(吉田調書)に関する報道について、「社内の精査の結果、吉田調書を読み解く過程で評価を誤り、多くの東電社員らがその場から逃げ出したかのような印象を与え、間違った記事だと判断した」と東電に対しても謝罪した。

 もうひとつは、いわゆる従軍慰安婦報道について木村社長は、「慰安婦を強制連行した」とする男性の証言に基づく記事を取り消すまでのいきさつや、国際社会に与えた影響などについて、第三者委員会を設置し検証することを明らかにしたうえで、「誤った記事を掲載したこと、そしてその訂正が遅きに失したことについて、読者の皆様におわび申しあげます」と謝罪した。

 最近の朝日は確かにどこかおかしい。ただ、これまで朝日がオピニオン・リーダーとして果たしてきた役割は、評価されるべきだし、この2件は決して賛同できないが、他のメディアと比べてその権力におもねない姿勢には平素より感服している。それが結婚以来45年間、経済紙日経新聞とともに一筋に朝日を購読してきた理由である。朝日がなかったら、日本のジャーナリズムの崩壊にもつながると考えている。それだけに朝日は自らの立場を良く弁え、間違った道を進まないよう強く求めたい。

 朝日新聞に対しては、報道において正義を主張するなら是々非々も貫いてもらいたい。

2014年9月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com