「イスラム国」に対する非難がにわかに高まっている。その最たる原因は、彼らが残忍な人質殺害の手口を世界中にテレビで流したからである。「イスラム国」がアメリカ、イギリス、フランス人たちを生贄にしたことで、国連の場でも「イスラム国」を締め付け、壊滅させるべきだと安保理事会が首脳級会合で具体的な措置を各国に求める決議を採択した。その内容は、「イスラム国」の過激思想に感化された若者がジハード戦士として訓練を受けた後に自国に戻ったりすることを取り締まるよう各国に要請し、資金の移動も制限できるような法律の整備を義務付けた。
実際シリアやイラクの過激派には、イギリスから500人、フランスから1000人、ドイツから400人以上を含む80カ国以上の国々から1万5千人以上の若者が加勢している。
国連の場を離れてもニューヨーク市内のホテルで主要先進7カ国(G7)とEUの外相会議が開かれ、危機感を共有し、「イスラム国」を弱体化させ、壊滅させる長期的な取り組みを支持すると明確に示し、米軍と有志連合による空爆を高く評価した。
アメリカを中心に欧米諸国のみならず、中東でも驚くほど「イスラム国」憎しの感情が高まり、同盟関係や思想を凌駕して、これまでには考えられない同盟的な約束や相互理解を示す様子がここ数日の間に顕著に見られるようになった。
中でも最も奇妙な現象は、アメリカがあれほどシリアのアサド政権打倒を画策し、一時シリアの反政府テロ集団を応援していたが、ここへ来て逆にシリア政権に対して「イスラム国」と結び付いているテロリスト集団を壊滅させるためにシリア北西部への空爆許可を申し出たところ、あっさりシリア政府が容認してアメリカと中東5カ国がシリア国内の北西部を空爆したことである。
もうひとつここへ来て態度を豹変させたのは中国である。
国連安保理事会で決議を採択した背景には、従来なら中国やロシアの反対で日の目を見なかったが、両国ともに欧米に同調したのは、それぞれ家庭の事情があった。
とりわけ中国はシリアやイラク国内のイスラム過激派集団に対する攻撃に反対していたが、自国内にも不発爆弾を抱えて、メンツにばかり拘ってはいられなくなりご都合主義を通すことになった。中国にしても少数民族、特にウィグル族が中国政府の手の届かないところで、自在に活動され、テロを起こされては困る。ウィグル族が関わるテロが特発する中国は、思案の末安保理事決議を支持することを表明した。
これが中国のウィグル族弾圧の口実となり、中国は自分たちの判断が国際世論に支持されていると見当違いに受け取られても困る。