4834.2020年8月6日(木) 「原爆の日」、非現実化する「非核3原則」

 広島の「原爆の日」である。例年通り平和記念公園で原爆による死没者の慰霊式が行われた。ただ、新型コロナウィルスの影響もあり、大幅に出席者を制限しその数は例年の10分の1以下だった。思えば、30年以上も以前にテニアン島で広島へ原爆投下に向かった憎っくきB29「エノラ・ゲイ」が離陸した小さな飛行場を訪れたことがあった。

 安倍首相は「75年前、1発の原爆により廃墟と化しながらも先人たちの努力によって見事に復興を遂げたこの美しい街を前にした時、現在の試練を乗り越える決意を新たにしている」と当たり障りのないスピーチをした。だが、アメリカと中国・ロシアなど核保有国同士の対立は深まり、核兵器の禁止を求める非保有国との溝は埋まっていない。松井一実広島市長は、平和宣言の中で日本政府に対して「世界中の人びとが被爆地広島の心に共感し、連帯するよう訴えて欲しい」と要請し、核兵器禁止条約の批准を求めた。

 政府は、これまで核保有国と核非保有国との間の橋渡しを務めたいなどと1歩下がった第三者的発言を繰り返してきた。世界で唯一の原爆被災国である日本の言動が一番注目され、最も説得力がある。それにも拘わらず、日本政府はいつも1歩退いて他人事のような言動を繰り返している。

 2017年7月に国連で採択された核兵器禁止条約は、核兵器の開発や保有、使用を全面禁止する内容で現在122カ国が署名しているが、アメリカ、ロシア、中国など核保有国9カ国は署名していない。当然被爆国の日本は書名・批准すべきであるが、前記のように保有国と非保有国の橋渡しをしたいなどと逃げるようなパフォーマンスで、積極的に核兵器禁止条約の批准をする気がない。今日の慰霊式に参列された中満泉・国連事務次長は、核兵器禁止条約に参加しない日本の立場について、ドアを完全に閉めないで欲しいと議論への参加を呼び掛けた。

 かつては、「持たず、作らず、持ち込まず」と言われ「非核3原則」を声高に叫んでいた自民党政権だが、今日安倍首相は本音かどうかこれを守っていきたいと述べた。だが、アメリカの声ひとつで「非核3原則」ならぬ「核3原則」へ変わり得ることは分かり切っている。安倍首相をはじめ、政権閣僚には、核開発、所持に抵抗がなくなっているように思えてならない。やはり彼らの間に以前のような戦争体験者がいなくなったからだと思う。戦争の怖さ、悲惨さを言葉ではなく、実感として感じていないからである。そういう意味では、今日の安倍首相の言葉には、平和を求める魂が籠っていないと言わざるを得ない。

 残念ではあるが、「原爆の日」の理想は遠くなりにけりというところである。

2020年8月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com