4824.2020年7月27日(月) 心配な米中両大国の対立

 アメリカの国際政治学者グレアム・アリソン氏によると過去500年間の戦争で、覇権勢力と新興勢力が対立した16件の内、12件で開戦に至ったと分析している。戦争になりそうでありながら寸前で開戦が食い止められたのに冷戦下の米ソ戦争がある。東西対立時代に戦火間際まで対峙した当時の米ソ両大国は、まさに戦争とは一触即発だった。特に学生時代に衝撃的だったのは、あわや第3次世界大戦勃発かと思わせた1962年のキューバ危機だった。ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設していることが発覚して、アメリカがカリブ海でキューバを海上封鎖して米ソの緊張がいやが上にも高まった深刻な事態だった。核戦争一歩手前まで緊張が高まった。瀬戸際でアメリカがキューバを攻撃しないという条件で、ソ連がミサイル撤去に同意して最悪の事態は避けられた。ケネディ大統領とソ連のフルシチョフ首相の回戦への意向が一致して間一髪で何とか戦争は避けられた。その当時の中国は国土、人口こそ巨大だったが、まだ経済力は低く途上国のひとつとされ国際社会における存在感は薄かった。

 あれから60年近くが経ち、今や中国はアメリカと並ぶ巨大国家となり、経済、軍事両面で世界にその存在感を際立たせている。覇権勢力アメリカと新興勢力中国の格差は着実に狭まり、今や中国は旧ソ連を抜いてアメリカに拮抗するまでに追い上げてきた。しかし、国内に多くの貧しい農民層がいるにも拘わらず、彼らを農村に縛り付けて彼らが都市部で働くことを禁じたり、農民らに富の恩恵に浴させないよう抑え込んでいる。その一方で、「一帯一路」政策により外向きには経済力をアピールして、途上国に経済支援をしつつ中国援助の痕跡を残して彼らを中国の望む方向に導いている。

 ヒューストンの中国総領事館が閉鎖を命じられた仕返しに、中国・成都にあるアメリカ総領事館が中国政府から閉鎖を命じられ、早くも看板の撤去から星条旗の降納、職員の退去まで行動に移されたようである。米中両国の対立には、前向きな原因があまり見当たらないことが残念である。現在国際問題化している中国の領土拡張に伴う南シナ海と東シナ海の領海進出はその度を超えている。中国の南シナ海での威圧的な振る舞いを抑止するためと称して、アメリカ海軍は今月2度に亘って空母による演習を南シナ海で実施した。

 また、最近の中国による一方的な香港国家安全維持法の施行などもアメリカ、及び同盟国の厳しい非難を受けている。しかし、欧米諸国にも反省と後味の悪さは残る。実は2014年に白書で香港返還以来初めて香港に対して中国政府は「全面的な統治権を持つ」と記した。その時香港の民主派弁護士、李柱銘氏は香港をまるごと返還すると香港は不安になり、外国人投資家も香港から撤退することになり、それは鄧小平主席も望まなかったと述べた。李柱銘氏は、「白書は驚く内容で、これは間違いだとはっきり伝えたが、宗主国イギリスを含めて各国政府は問題ないと言った」と当時の諸外国の対応を批判している。これが今中国側に香港支配について強気にさせた背景があるのではないだろうか。「後悔先に立たず」である。

 アメリカの習近平国家主席批判も激しくなった。今後米中の対立は益々エスカレートするのではないだろうか。特に11月の大統領選が終わった後に、アメリカは中国との外交関係を止めるくらいの覚悟で中国を徹底的に攻撃するのではないだろうか。当分米中両国の行動から目が離せない。

2020年7月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com