4821.2020年7月24日(金) 米中両国の総領事館閉鎖合戦

 昨日アメリカのポンペオ国務長官が、唐突にヒューストンの中国総領事館を閉鎖することを命じた。その晩中国総領事館内の空き地で多くの書類が焼却され炎が上がったが、治外法権の壁のため消防車が立ち入ることは出来なかった。しかし、なぜ、この時に、と思う不思議な事件である。そして今日中国外務省は、成都市内のアメリカ総領事館の閉鎖を求めた。明らかにアメリカへの対抗措置である。

 懸念するのは、こうした仕返しがエスカレートして留まるところがなくなってしまうことである。ヒューストン総領事館の閉鎖を通知した日の記者会見でトランプ大統領は、中国の在外公館の追加閉鎖はいつでも有り得ると述べていたが、今後他都市の総領事館の閉鎖も行われる可能性がある。

 かねがね中国政府の在外公館には、コンピューターによる知的財産権の侵害や、機密情報の盗聴などとかくの噂が流れていた。しかし、アメリカがここまで踏み込んだ行動を起こしたというのは、よほど確かな証拠を入手したからであろう。それが前記の書類焼却と関連して考えられる。

 昨今の米中対立の背景には貿易問題があるが、最近では香港に対する中国の「1国2制度」を無視した香港国家安全維持法の強圧的な施行がある。これについて中国は、アメリカの同盟国であるイギリス、カナダ、オーストラリア、日本などから厳しい非難を浴びている。総領事館閉鎖は必ずしもこの延長線上にある問題ではないが、昨今の中国の海洋進出による覇権主義的な南シナ海、東シナ海での領土拡張行為に伴う関係国との摩擦も大きく影響している。

 問題は今後の米中両国の対応である。このままエスカレートしたら両国が衝突しかねない。アメリカが以前から中国のスパイ活動を非難していたが、それは中国にとって必ずしも身に覚えがないわけでもないのではないかとの疑念がどうしても消えない。前記ヒューストンの中国総領事館閉鎖の通知があって間もなく館内の空き地で大量の書類を焼却するなどということは、普通では滅多にあることではない。中国側に何らかの疚しいことがあるのではないかと邪推せざるを得ない。

 いずれにせよ現状は報復合戦に発展しつつある。このまま在外公館の閉鎖を相手国に要求し続けていたら両国の外交窓口はなくなってしまう。世界の国々の安全のためにも、ここは頑固な2人の大国リーダーらしからぬ首脳が、互いに相手国の事情をじっくり配慮する賢明な度量が望まれる。

2020年7月24日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com