4800.2020年7月3日(金) 旧軍隊では「『いのちの重さ』は下級兵士ほど軽い」

 今年は終戦75年という節目の年であり、それは取りも直さず東京大空襲、沖縄戦、広島・長崎原爆投下なども75年目を迎えることになる。かつてミヤンマーがビルマと呼ばれていた当時、20 年以上に亘って元陸軍航空ビルマ派遣部隊の戦没者巡拝慰霊団をお世話していた関係で、戦友会の方々から随分戦争に纏わる話を伺った。また、ビルマ慰霊団の縁から旧厚生省の戦没者遺骨収集事業に携わることになり、厚生省の職員や遺族会の方々からも戦地の状況をお話しいただく機会があった。戦友会の方々からは、現場のおぞましい話も随分聞いた。

 さて、‘NATIONAL GEOGRAPHIC’6月号には「終戦から75年 大戦の記憶をつなぐ」と題する特集が組まれている。先の大戦で生き残られた各国の戦争体験者が写真入りで紹介されている。その中に日本人も何人かいる。そのひとりで、海軍特別少年兵として出征された92歳の方は、「死に際には若い兵は母を、年長の兵はわが子の名を呼んでいた。誰1人として天皇や国を呼ぶ者はいなかった」と述べている。900日に及ぶドイツ軍とのレニングラード包囲戦で約80万人の民間人が犠牲になったが、その時家族を亡くした87歳のロシア人女性は、「何も思い出したくない。話すのも嫌。あまりにもつらかった。~あんな恐ろしい光景は2度と見たくない」と恐怖の体験を語っている。激戦のあった硫黄島摺鉢山や、レニングラード市街戦の写真も掲載されている。

 第2次大戦で亡くなった人は、約6千6百万人と言われ、その内4千5百万人が民間人と見られている。その中にはホロコースト(大虐殺)の犠牲となった6百万人のユダヤ人が含まれている。日本人は国内外で324万人が尊い生命を落した。何といっても気の毒なのは、戦争とは無関係の民間人犠牲者が多いことである。日本の軍隊内では階級が下がるほど犠牲者が多かったということが、ノンフィクション作家・澤地久枝さんの調査で知った。戦友会の方々の話や、噂には聞いていたが、澤地さんは「記録ミッドウェイ海戦」を執筆するに当たって調査していて分かったという。

 士官、下士官、兵士の階級別戦死者の割合が、4%、28.9%、67.1%と記されており、戦死するのは圧倒的に下級兵士であることが分かる。ところが、アメリカでは、その比率はそれぞれ3分の1ずつで、いかに日本軍が下級兵士に犠牲を強いていたかということが推察出来る。澤地さんは、「『いのちの重さ』は下級兵士ほど軽い」と述べている。

 元兵隊さんから聞いていた話は本当だったのだ。あと1か月余りで75年目の終戦記念日を迎えることになる。親しくしていただいた元日本兵の方々も、今ではほとんど逝かれてしまった。心よりご冥福をお祈りしたい。

2020年7月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com