2702.2014年10月6日(月) 「冒険ダン吉」に差別はあるだろうか。

 昨日から台風18号が関西地方を襲い、今日朝8時頃浜松市へ上陸するや僅か4時間ほどで関東地方からあっと言う間に東北沖方面へ駈け抜けて行った。猛烈な風と雨でNHKは朝から台風情報と交通関係のニュースをずっと流し、ついに8時から始まる話題の朝ドラ「マッサン」は放送中止となってしまった。

 日本本土を襲った強い台風のせいで、この2日間御嶽山の行方不明者捜索活動がまったくできない。犠牲者は51人で身元不明者がまだ12人もいる。上空から撮った一昨日の映像では、頂上付近には惨憺たる景色があり、灰が降り積もったうえに雨が降ればどういう状況になるのか、安否を心配し無事を願っている行方不明者の家族を思うとお気の毒でならない。

 ところが、昼前に台風は関東地方を通過すると空は明るくなり、青空が見えてきた。ほっとしていつも通り駒澤公園へウォーキングに出かけようするとお隣の小林さんのご主人が、直ぐに次の19号がやってくると言っていた。しばらく小林さんと立ち話をしていて日本の自然災害の多さと危険に話が及び、これだから原発稼働はわが国では心配の種であるし、原発再稼働は絶対止めるべきであると意見の一致をみた。

 さて、毎年定期的に高円寺で「西部古書展」という古本展示会が開かれ、いつの頃からか、主催者からパンフレットを送ってくれるようになった。ぱらぱらと頁を捲っていてそこに「冒険ダン吉」全4冊を見つけた。しかも昭和13年発行の初版ものだという。近刊「南太平洋の剛腕投手」でも「冒険ダン吉」については散々触れた。森小弁がそのダン吉のモデルだという挿話も盛り込んだ。

 パンフレット表示にお粗末な間違いがあり書店とひと悶着あったが、購入することに決めた。。何のことはない。実際には昭和13年ではなく、51年発行のものだったが、今日その実物が送られてきた。

 第1巻のあとがきに漫画家手塚治虫がこういうことを書いている。

 「ダン吉が侵略主義だの、人種偏見だのと指摘されるのは、結果論であって、当時の読者はそんなことはおかまいなしに、おもしろがって読んでいたのです。たとえば、ダン吉に仕えている原住民たちがそうです。人食い人種かなにかわからないけれども、彼らの振舞いや生活が、なんと身近で庶民的ではありませんか。そこらのサラリーマンや、職人や、いなかのオッサンたちと、なんの変わりがないではありませんか。しかも、時には彼らは、まだ社会的に未熟な少年であるダン吉に、道理を教え、忠告し、父親や兄のようにやさしく見守ったりするのです。こんなあたたかく、人間愛にあふれた黒人たちを、それまで世界中のどの漫画家が描いたことがあるでしょうか」。

 手塚治虫が言っているように、私も「冒険ダン吉」には、教条的な意味の「差別」とか、「野蛮」「暴力的」を意図するようなことはなかったと思っている。拙著では当初タイトルに考えていた「酋長」という言葉が差別的と指摘され、結局撤回することになってしまったが、今でも私にはこれらの差別的と言われる言葉が差別だとはとても思えないでいる。NHKでは「酋長」という言葉を差別用語と看做して使用しないようだが、手塚氏のあとがきで救われたような思いである。

 改めて全4巻を通読してみたいと思っている。

2014年10月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com