今日は予想していた通りノーベル物理学賞を受賞した3人の日本人科学者のニュースで持ちきりだった。テレビでは改めて青色LEDの効用について図解付きで詳しく説明している。勝てば官軍とでも言おうか、その中で十数年前に特許権問題で勤務先の会社と争っていたUCSBの中村修二教授の発言は、他の2人の受賞者の言動とは異なりやや異色と言えるものだった。自分が今日あるのはそのベースに怒りがあったからだと言い、日本の研究環境には年功序列などを理由に自由がないと意気軒昂と述べたことが一際目を引いた。
中村教授は、日本企業のグローバル化を進める必要性を訴え、誰もが起業できるよう、規制やシステムを見直すべきだとも注文をつけた。日本の企業と争った後アメリカへ渡りUCSBで10年以上に亘って研究を続けてアメリカ国籍を取得した立場から、過去の受賞者のやや控え目な姿勢とは一味違って日本社会へ厳しい苦言を呈した。いずれにせよ実績を残した人の発言は、流石に説得力があるなぁと感心させられる一方で、何となく違和感のようなものを感じたのも事実である。
さて、その他に今朝の朝日新聞を見て驚いたのはアメリカの名門ホテルの売却である。ニューヨークの高級ホテルと言われる「ウォルドルフ・アストリア」が中国の保険会社に買収されたのだ。アメリカのVIPや有名人もよく泊まり、安倍首相も国連総会の折に宿泊した名門ホテルである。かつては女優マリリン・モンローが住まいとしていたし、ダグラス・マッカーサー元帥未亡人も亡くなるまで居住していたホテルである。
場所的にもセントラル・ステーションのごく近くの至極便利なロケーションにあり、私自身デラックス・ツアーで何度となく泊まったことがある。かつて日本経済が急激に発展して、アメリカへの進出が顕著になった時代に、ソニーがアメリカ人の神経を逆なでするような些か強引なやり方でロックフェラー・センターを買い取り、ニューヨーカーの心象を損ねたことから物議を醸したことがあった。今度は中国の保険会社が買収したが、向こう100年間はホテル経営を旧所有者のヒルトンが請け負うという、外からは窺がい知れない契約を取り結んだので、契約後にヒルトンはホテルの大改装を計画しているという。
それにしても財産が他人へ移るとなると幾許かの寂寞感が伴うものだが、この取引はソニーの取引とは異なり格別問題にはなっていないようだ。何とも分かりにくいドライなビジネスかと思う。