強烈な台風19号がちょうど沖縄を襲っている。先日来アメリカのテレビ局でも話題になって、900ヘクトパスカルの‘Super typhoon’と呼び、近日日本列島を襲うと取り上げていたほどである。明日遅くから明後日にかけて関東地方にやって来るようだ。先週の18号より本州内陸部を通過するとの予報なので、気象庁はしきりに警戒を呼び掛けている。一昨日まで雨が降っていたために、御嶽山の行方不明者の捜索活動も一時中止していたが、昨日再開し早速死亡者を発見した。他にも複数の身体の一部を見つけたとの報告があり、暗い気持ちになる。これで犠牲者の数は56名になった。それにしても自衛隊、警察、消防が体調不良者を出しながらも一体となって、一刻も早く行方不明者を探し出そうとの気持ちには頭が下がる思いである。
ただし、台風の襲来が予想されるため、明日、明後日の2日間は捜索を見合わせるという。行方不明者の家族にとってはさぞかし恨めしい台風だろう。
さて、日経紙夕刊に連載されていた火坂雅志の小説「天下-家康伝」が昨日で終わった。1年半、454回に亘って大名間の心理的、実践的戦いを描いた長編力作である。テーマの通り徳川家康の天下取りを描いた小説だが、小説は関ヶ原合戦で家康軍が石田三成軍に勝利して、ほぼ天下の帰趨を決めたところで終わっている。家康は関ヶ原の後一旦は隠居を決め込むが、柿田川の湧水を見ながらここまで辿って来た道を思い、これまで「上を目指すことを途中で諦めていたら、自分はついに何者にもなり得なかった」と思い直し、隠居を撤回し新たな天下取りへ気持ちを切り替える。天下取りはまだ終わらぬと再び立ち上がったところで「完」となっている。ここに至るまでの経緯と家康の心理を巧みに描いた作品で、家康があまたいる秀吉配下の大名の中からいかにして東軍のリーダーとなったか、というストーリーを分かりやすく書いている。なるほどこういうステップを踏んで天下人になったのかと納得しながら読んでいた。
加えて今日も放映されたNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」と並行的に話を進めていたので、秀吉の天下取りと家康の生き方を比較しながら読んでいた。それが一層時代背景と相まってストーリーを分かりやすくさせてくれた。こういう大舞台的な史実に沿ったストーリーを、歴史上あまりにも有名な登場人物の言動と生き方をからませる中で知ることができるのは、ノンフィクション時代小説の醍醐味であり、最も魅力的な点だと思う。
また、誰かの作品で歴史を紐解いてみたいものだ。