4754.2020年5月18日(月) 検察庁法改正案、今国会見送り

 我々学生だった1960年に、戦後日本で最も大きな政治的、かつ社会的問題となった日米安全保障条約改定案反対闘争があった。当時多くの同志とともに反対運動に参加していた。それから早くも60年が経過した。ちょうど明日19日から明後日未明にかけて、自民党は採決を強行して改定案は議会を通過した。法案可決後全国的に拡大した激しい抗議デモに流石に厚顔の岸首相も逆らえず、法案通過の5週間後に辞任した。

 そして今国会では検察庁法改正案が、岸首相の孫である安倍首相によって今週中にも採決されようとしていた。それがあまりにも国民から反対の声が上がり、特に検察庁関係者やOBからの反対が強く影響したようで、ついに本日自民党は今国会での法案提出を断念し、先送りすることになった。

 取り敢えず、一時的な強風は収まったが、秋の臨時国家で再び法案提出を蒸し返す考えのようである。血は争えないというが、岸首相にしろ、安倍首相にしろ、どうして選りによって大事な法案提案に一族が先頭に立ち、国民の反対を無視して押し切ろうとするのか。

 このところ新型コロナウィルス対策でやゝ不手際が目につく安倍首相について、今朝の朝日紙に世論調査の結果が掲載されている。政府の判断で検察幹部の定年延長を可能にする同法改正案について、賛成15%に対して反対は64%もあり圧倒的に不支持である。安倍内閣の支持率も先月の41%から更に下落して33%となった。2年前の森友・加計問題への批判が高まった時に次いで低い。注目したいのは、賛成者のうち、成立を急ぐべきではないとするは68%もいたことである。それにも拘わらず、依然首相の腹は法案成立に拘っていた。

 強い反対論には、懸念されていた「検察人事への政治介入」問題があるからである。首相はないと言い張っているが、国民は首相の言を信じておらず、必ず介入すると睨んでいる。国のリーダーである首相が国民にウソをつき、私利私欲により自らの身を守ろうとする行動に国民はあきれ果て、信頼していないことを明白に示している。

 岸首相は安保条約改定案強行後5週間以内に総理職を辞したが、安倍首相もいつまでも非倫理的なことを実行しようとするようでは、その地位に留まっているのは難しくなるかもしれない。

 ついては、安保条約は締結以来日米同盟の絆と言われてきたが、今では絆どころか、トランプ大統領にとっては自らの大統領選を有利に運ぶための実績作りの道具に利用され、やたらにイチャモンをつけるようになった。

 その最たるものは、同法第5条の「日本国の施政の下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃に日米両国が共通の危険に対処するよう行動する」の条文をダシに取り上げ、「もし、日本が攻撃されたら、我々は全軍で日本のために戦うのに、アメリカが攻撃された場合、日本は戦う必要がない。これは不公平だ」と述べた。この背景には、日本における米軍駐留経費を日本により多く負担させようとの姑息な考えや、貿易問題で日本に譲歩させようとの腹が透けて見える。

 しかし、ヨーロッパ諸国の駐留米軍の待遇に比べて、日本の待遇の方が遥かに米軍に有利であることや、米軍が日本のために全力で戦うと言っておきながら、過去に竹島を韓国軍が占拠しても、また貝殻島を旧ソ連が上陸支配しても、助け船なんて出さなかった。岸政権が締結した安保条約には不条理な点がいくつも見られる。同じ血を引く安倍首相の検察庁法改正案も、節穴だらけではないか。

2020年5月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com