九州電力川内原発がある鹿児島県薩摩川内市議会が原発再稼働に同意した。元々市内にはめぼしい産業がなく、原発が最大の産業にして唯一の産業だったから原発城下町として、再稼働を選択した心境は理解できないこともない。
市議会がそうなら、再稼働派の岩切秀雄市長も「安全性については国がきちっと整理したと思う。福島で起きた津波や地震、原発事故に対応するのは充分、100%と言ってもいいと信じている」とまったく電力会社経営者と同じような考え方で再稼働に同意すると語っている。これに対して原子力規制委員会の田中俊一委員長は「安全ということは申し上げません」と再稼働には厳しい見方を示している。
根っから原発再稼働に賛成している岩切市長は、台風や地震、火山の噴火が同時に発生するような規制委員会の想定を上回る複合災害の危険性については、「現段階では考えない」とまるでノー天気なのである。これで住民の安全について責任を負わなければならない首長の職を全うできると思っているのか首を傾げざるを得ない。自然災害の怖さはつい最近の御嶽山の噴火で骨の髄まで思い知らされたばかりではないか。しかも地元とは言っても原発が設置されている場所の自治体を対象にしているようだが、それなりに影響を受ける周辺自治体はどうなっているのか。これに対する心配も明らかに聞かれる。一旦原発が事故を起こせば、いわゆる「地元」から汚染された空気は風に乗って周辺に流れてくるのである。
原発再稼働賛成は何も市長だけが責められるだけではなく、安易に経済性だけに傾きがちで原発再稼働に賛成する市長を選択した住民もよくよく考えて、自然災害が起きて事故発生した場合の責任を自分で負う覚悟があるのかを自分に問うてみることが必要ではないか。自分たちが生活していくために危険は二の次だと考えるなら、傍からいくらアドバイスしても無駄だろう。
それにしても市長の言い分を聞いていると、迷っている市民の気持ちを生命と引き換えにするような究極の選択をしている。このように街を活性化させるためには原発が必要だと、深く考えることもなく決めるべきテーマではあるまい。無神経、無感覚な輩が蔓延りだした。まったくうっとうしい時代になったものである。